茜の蓬莱蕉 (ページ26)

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現在清光が処分を保留にされているのは、政府にいるという刀剣男士が今回の処分について異を唱えているから。

おかげで再刃の日取りは延期されたものの、不安要素を排除したい政府は、清光に対する検査を催促している。

検査とは、常時作動している刀剣男士たちの監視システムよりも遥かに精度の高いもの。

刀剣男士たちは常時システム上で監視され、背反意思を感知されたときに何らかの処分を受けることがある。

政府はシステムを盲信している節があるが、当然、システムは絶対ではない。そのために、正式な処分が下されるには精度の高いこの検査を受けることとなる。

検査自体は単純。刀剣男士の主とそうでない審神者の二名が刀剣男士に同時に霊力を注ぐ。

それで何も起こらないのが正常とされる。

しかし何らかの背反意思が存在する場合、主である審神者が注ぐ霊力に大きな揺らぎが生じる。その結果、もう一方の審神者はそれを気取ることができる。

そこで加州、もとい一文字則宗が提案したのは二人の入れ替わりだった。

当然、異常がなければ刀剣男士は解放されることとなる。

それを聞いた清光は驚いた様子で、しかしすぐに眉を寄せる。

審神者の霊力は個々で明確に異なるため、この検査の信頼性は非常に高い。だからこそ、誤魔化しは一切通用しない。

「…刀剣男士を管理するシステムは審神者が注ぐ霊力によって個々を識別してる。同じ刀剣といえど、主が違えばすぐに気付かれ─────」

清光はそこまで言うと、不意に言葉を途切れさせた。

「そうか」

話に納得がいったらしい清光が、目を丸くして顔を上げる。

「主を同じくしている今、俺たちに注がれている霊力も同じ…政府には識別が出来ない。審神者の兼任なんて前例がないから、今この時点だけ扱える、システムの弱みをついた方法……」

自分の頭の中を整理するようにぶつぶつと続けたあと、清光は小さく笑った。

「……はは、とんだ悪知恵じゃん」

そんな言葉とは裏腹に、その表情は悪童のように楽しげだった。