茜の蓬莱蕉 (ページ25)

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「たかが一振のために、命すら惜しまない。お前には勿体ないと思わない？当のお前はここで被害者面して助けられるのを待ってるだけなのにさ」

口元を覆っていた掌が、するりと喉元に移動する。

「…ねぇ、俺たちを利用するなんて言ってたけど、あんた本当は全部ひとりで片をつけようとしてたでしょ」

「……何の話を、」

首を撫でるようにして触れた掌と反対の手の指先が、弄ぶように唇を掠める。

「ひとりで全部、終わらせるつもりだったでしょ」

底を透かすようなその目に、小さく喉が鳴る。

「……嘘が下手、うちの年寄りは目敏いの。バレてないとでも思った？」

彼がそう称しているのは、あの本丸においては一文字則宗のみ。

私は何も答えないでいたけれど、加州は少し笑ってすっと身体を離した。

そうして、その声と表情が真剣なものに変わる。

「でも、あんたが身を削る必要はない」

「…？」

やけに自信に満ちた様子の彼は、言って清光の方へ視線を投げた。

「守られてばかりじゃ格好つかないだろ？…加州清光」

つかつかと歩を進めた彼の先には、戸惑う様子の清光の姿があった。

近付くとまるで鏡合わせとなった彼らの姿に、にわかに頭が混乱する。

「じーさんらしい古いやり方……でも、今の時点では多分一番有効な手段」

加州は呆れたような感心したような不思議な葛藤の見える表情をしてから、その口端を釣り上げた。

「お互いに危険は伴う。最悪俺もお前も刀解処分。その覚悟があるなら…それでも主を護りたいって言うなら、手を貸してやる」