茜の蓬莱蕉 (ページ24)

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「……何？何で俺がいるの」

それまでとは一転した冷たい目が、加州を鋭く射抜く。

「あ、彼は…」

「俺から説明する。…けど多分、こんのすけはそんなに時間くれないから、そろそろ霊力の供給を始めた方がいいんじゃない？」

加州は私を制止すると、ちらりとこちらに目線を配った。

それを受けた私は、その通り清光の手に触れて霊力を集中させる。

「…処分待ちなら、通達くらいあっただろ？お前の主は今、俺のいる本丸で審神者を兼任してる。ある明確な目的を持ってね」

「！その話は」

「そっちに集中して」

何を話すつもりだと言おうとして、しかしすぐにそう切り返された。

少しの間真剣な眼差しに見つめられ、私はそこから視線を逸らして口を噤む。

「お前の主は、お前を助けるために文字通り命を削ってる。それなのにお前は何？」

苛立ちの窺える声が、徐々に明らかな怒気を含んでいく。

「自分の命を掛けてまで助けようとするのがどんな奴かと思えば…この体たらくとはね。それなら俺が遠慮するのもおかしい話だよね」

「なんの話を…」

清光が眉を寄せたとき、ふと後ろ髪が持ち上げられる。

「？」

気にはなるものの霊力を込めている最中のため目が離せないでいると、目の前の清光がその表情を怒り一色に染め上げた。

「っお前何して…！」

「えっ？……あっ」

さすがに驚いて振り向こうとしたものの、それは後ろから回された両腕に阻まれた。

「わからない？」

加州の腕の中にいると気付いたのは、その声が耳元のすぐ側でしたからだった。

「……健気だよね？俺がお前を助けるのを手伝う代わりに、俺の主になってくれるなんて」

「っそ─────むぐっ」

その話はまだ決定したことではない。再びそう伝えようとした私の口元は、加州の掌によって塞がれた。

その場がしんと静まりかえってから、次に声を発したのは清光だった。

「誰が、誰の主になるって？」

清光は取り乱すわけではなかったけれど、その静かな声にはえもいえぬ感情が混ざりこんでいた。

「彼女が、俺の主になるんだよ。不甲斐ないお前のためにね」