茜の蓬莱蕉 (ページ23)

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おそらく牢と聞いてすぐに想像するものとは少しだけ違う、座敷牢のような場所に彼はいた。

格子に背を預ける後ろ姿を見て、目元が熱を持った。

息を吸い込むと、唇が震えた。

「─────清光」

絞り出した声は力なく掠れていて、到底彼まで届いているとは思えなかった。

「……え…？」

しかし、小さく肩を揺らした彼はすぐに驚いた様子でこちらを振り向いた。

「あ、る…」

状況を呑み込めていない様子の清光へ歩を進めると、次第にその顔に感情が乗るのが見て取れた。

「何でここに……」

「…審神者様の霊力を賜る為です」

私が何か言う前に口を開いたのは、いつもの狐。

「貴方は現状、処分が保留されている身。政府には貴方を害してはいけない…霊力を与えないこともそれに相当します。しかし主と定めた者からしか、力を受けることはできませんので」

狐は感情の見えない声色で言うと「終わるまで外に控えています」と一例してその場を後にした。

狐が先程言った通り、私が政府へ赴いたのは清光へ霊力を補うため。

まさかこのような形で再開するとは思っていなかったが、ちょうど良かった。

狐が出ていったのを確認してから、格子の前で膝を折る。

「……久しぶり、清光」

預けられた鍵を鍵穴にはめて、その扉を開ける。

「人の姿を保つのも辛かったでしょう、今…」

「主…っ！！」

言い終わらないうちに、清光が私を掬うようにして抱きしめた。

「清…」

驚いて声が盛れたものの、それを遮るように抱き締められた腕に力が入る。

「主…どうしよ、俺今凄い喜んでる」

苦しいほど抱き締められたまま、清光が堪らなそうに零す。

どういう意味か聞こうとする前に、清光は先の言葉を続けた。

「自分から格好つけて素直に捕まっといてさ…主が来てくれて、喜んでんの」

その声は清光が言う通り嬉しそうで、しかしどこか怖々としていた。

「……はぁ…聞いてらんない」

そのとき、酷く冷たい声が後ろから聞こえた。