茜の蓬莱蕉 (ページ22)

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彼らの本丸を出る前、加州が「一人で行かせる訳にはいかない」と言って急遽随伴する形になったが、彼らには私を護衛するような責任などない。

「ダメ。あんた危なっかし過ぎるから」

加州は不満げにそう言うと、音を鳴らして扉を開くエレベーターに先に乗り込む。

そうしてエレベーターの中でくるりとこちらを振り向くと「それに」と続ける。

「気になるんだよね、あんたがここまでするそっちの俺がどんななのか」

私はエレベーターに乗り込んで、一歩下がる加州の前で先程の彼と同じように体の向きを変える。

「うーん」

背中越しに答えを待っているであろう加州に、どう答えようかと頭を捻る。

「…貴方と何も変わらないと思いますよ」

しかし、考えた割に出てきたのは陳腐な返答だった。

「っはは、まぁそりゃそうか」

私の返答に対して、彼が可笑しそうに笑う。

「はい。貴方と同じ、強くて仲間思いで……少し不器用だけど、とても優しい子です」

やがてエレベーターが目的の階に辿り着き、そこから出る。

「？」

すぐに後に続くと思っていた加州は、どうしてか片手に顔を押えている。

「どうされました？」

慌ててエレベーターの開くボタンを押し、声をかける。

すると、彼は大きなため息をついてから拗ねたような顔できっとこちらを見た。

「…別に」

言ってさっさとエレベーターを降りた彼は、すたすたと進んだ少しのところで立ち止まり「早く行くよ」とこちらを振り向く。

何が何だか分からないままその後に続くと、半歩後ろに付くようにして彼が歩調を調節してくれたようだった。

「あんた、人誑しってよく言われない？」

「言われたことはありませんが」

「そう……」

今のやり取りの意図がわからずちらりと彼に視線をやると、彼はやや気まずそうな様子で「前向いてなよ」と言葉だけ返した。