茜の蓬莱蕉 (ページ19)

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「……そ、れは」

どういうことだと聞きそうになって、言葉を呑み込んだ。

どうもこうもない。そのままの意味だろう。

主のいない放置された本丸。審神者が配置されたことで再び元の姿に戻ったというのに、そう易々と手放そうという気になるわけがない。

それも、自分たちがリスクを侵してまで。

私が彼でも、同じようなことを言っただろう。

そう思うと、言葉が詰まった。

「狡いことしてごめん、でも俺…」

加州はそこでふいに言葉を途切れさせて、振り向きざまに立ち上がり障子戸を開ける。

「うわっ！？」

すると、戸に耳を寄せていたらしい刀剣男士が支えを失って廊下に倒れ込んだ。

「……な〜に盗み聞きしてんの？」

眉を寄せる加州の見下ろす先に半身を投げ出していたのは、大和守安定だった。

「えっと…二人がなかなか戻らないから、何の話してるのかなって」

「どこから聞いてた」

しどろもどろな大和守に食い気味に尋ねる彼の表情には、焦慮の色が見えた。

しかし一方の大和守は、不満げに口を尖らせて答える。