茜の蓬莱蕉 (ページ18)

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「……」

話を終えると、加州清光は神妙な面持ちで黙り込んだ。

当然と言えば当然の反応。

断られることは予想の範囲内、いかに彼らに危害が加わらないことを説明できるかどうかにかかって…

「いいよ」

思考を巡らせようとしたとき、そんな声がして顔を上げる。

「……え？今、なんと…」

思ってもみなかった言葉に、私は間抜けな声を漏らした。

「いいよ、って言ったの。あんたのとこの加州清光を連れ戻すのを手伝ってあげる」

「な…っ何を言っているのですか」

あっけらかんと答える彼に、思わず反射的に返す。

「貴方たちに危害が及ぶかもしれないんですよ、それをそんな簡単に────」

「俺、無条件に引き受けるなんて言った？」

私を遮ったその言葉に、声を詰まらせる。

「……条件とは？」

尋ね返すと、彼の真剣な目がこちらを射抜く。

「危険を承知でこんな話をするくらいだから、相応の覚悟はしてるでしょ？」

その問いかけに、ひとつ頷く。

覚悟ならとうにできている。

私がいなくなろうと、私の本丸の彼らがこれまで通り過ごせるように、様々な手を打ってからここへ来た。

たとえ私がここで斬り捨てられようと、彼が事を密告して私が処分を受けることになっても、あの本丸を、刀剣男士たちを護れるように。できる限りのことをした。

その瞳を真っ直ぐに見つめ返すと、その表情がほんの僅かにに綻ぶ。

「……あんたが加州清光を取り戻したらさ」

穏やかな声色に緊張が解けかけたとき、私は続いた言葉に息を止めた。

「───ここの…俺たちの、主になってよ」