茜の蓬莱蕉 (ページ15)

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好きで主を殺したわけじゃない。俺たちは戦う道具で、殺す手段で、だけど守れる物でもあるから。

人の身を得て、様々な感情を知った。

だから守りたかった。両方護ろうとした。

けど、どうしたところで片方を守れば片方を見捨てることになった。

審神者殺しなんて大事はすぐに政府に知られた。本丸は閉鎖、刀剣は全て刀解処分だとにべもなく伝えられた。

でもそれじゃあ、俺はなんのために主を殺したの？

「…審神者が就任を拒否した場合の、力の献上」

護ることに必死だった。

「その実態は単なる処刑と変わらない。政府の執行人には方方から批判が上がって、自らの命を絶つ者が後を絶たない。批判が政府にまで波及して、今はもう収拾しきれなくなってきてる」

あのとき、なんであんなことが思いついたのかは今でも分からない。

だけど政府の人間の目の色が変わったのを見て、好機だと思った。

「……その執行人を引き受ける。その代わりに本丸の閉鎖も刀解もしない。それでどう？」

傍から見れば無謀な提案だった。だけど、他に方法もなくて。

「大金を積まれても引き受け手のない執行人を確保出来て、練度の高い刀剣男士が揃った本丸の戦力も失わずに済む。これ以上ない取引なんじゃない？」

一度汚れた手でまた汚れ仕事をするのに、二度も三度もない。

感情を殺せば、それでやり過ごせた。