茜の蓬莱蕉 (ページ14)

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「なぁ、いつまでこうしてなきゃいけないわけ？」

牢というには小綺麗にされた部屋から、格子越しに管狐に尋ねる。

「貴方の処分が下るまで、ですね」

こちらを振り向きもしない管狐に「ふぅん」と適当に相槌してその場に腰を下ろした。

「…主、」

返ってくる筈もない呼びかけが、しんとした空間に放られて落ちる。

「貴方が審神者様を求めれば求めるほど、その首を締めることとなりますよ」

「…は？」

予想していなかった相手からの返しに、驚きよりも苛立ちが勝ってそちらを睨む。

「意味わかんないんだけど。急に何」

それが事実だとして、この狐にそんなことを言われる筋合いはない。

あからさまな態度を隠すつもりもなく尋ねると、目だけがちらりとこちらを見やる。

「審神者様には新たな任務が下され、現在二つの本丸の審神者を兼任しています」

管狐の言葉に、頭が真っ白になった。

「っお前…！！」

刀剣男士は、顕現や過去へ送り込まれる時のみ審神者の力を受けているわけではない。

顕現し姿を保っているうちは、常にその力を与えられ続けている。その数が多ければ多い程、当然その負担も甚大なものになる。

主は就任したばかりで霊力が安定しないうちから、四十振り近い刀剣男士を人の姿のまま保たせ、出陣や手入れまでその手でこなしていた。

その上、全員分の御守りまで持たせて。

「…何、させてるかわかってんの」

比喩ではなく、それは寿命を縮める行為。霊力とは即ち、生命力でもある。

格子を掴み、そこから怒声を浴びせても管狐は一切動じなかった。

それどころか、それまで無に近かった表情が不機嫌なものに変わる。

「これは刀剣男士を使役しきれなかった審神者への罰則であり、他の者たちへの戒めでもあります。貴方がどう足掻こうと、その全ての責は審神者様に問われることとなりますよ」

「……」

わかっている。

そんなこと、この狐に言われなくとも痛いほどに理解している。

管狐はわざとらしくため息をつくと、呆れた声色で続ける。

「……あのような取引を持ち掛けておいて、この有様とは」

「！」

その言葉に、心臓を握り潰されるような心地がした。