茜の蓬莱蕉 (ページ13)

今日:11 hit、昨日:54 hit、合計:7,401 hit

13. ページ13

私の疑問に答えていくようにひとつずつ話をしていく彼の言葉の続きを、静かに待つ。

「……俺を見たとき、自分がどんな顔してたかわかってる？」

「え……？」

予想していなかった問いかけに首を傾げると、彼はその様子を見て、ふと息をついた。

「前の主は俺を愛してくれたし、俺も主を愛してたけど…俺たちのそれとは違う」

真っ直ぐな瞳に見詰められると、胸の中を覗かれてしまうような心地がして、私は彼から目を逸らす。

「……まるで、いなくなった恋人の亡霊でも見たみたいな顔」

「！」

彼の言葉に顔を上げると、交差した視線のその先で目元が柔らかく綻んだ。

「細かいことまではわかんないけど、そっちの俺を政府に人質にでも取られてるのかなって。けど、ただ命令に従ってるってよりはもっと…何かをしようとしてるように見えたから」

続いた彼の言葉に、私は何も答えられずにいた。

彼の言っていることが図星だったからだ。

「とはいえ、俺たちに危害を加える気配もないし……それどころかあんたはここにきてからずっと、申し訳なさそうな顔ばっかりしてる」

彼はそこまで言うと、私の髪に触れて俯いたせいで落ちた一房を耳にかけた。

「…頼みを聞いてあげられるかはわかんないけど、話してよ」

心配そうな彼の声が記憶の中の清光と重なると、目頭が熱を持った。

「……私は、」