【ツイステ】式の日【デュース・スペード】《完結済み》

20話 ページ22

「こんなに色々貰って、お金も貰ってしまった」

「よかったじゃん」

「これはAに……」


夏の帰り道に、そう言って生のまま胸ポケットから貰ったらしい紙幣を渡してくる大荷物を持ったデュースに面食らって、首を勢いよく横に振った。


「いやマジでいらん！自分で使いな」

「でも色々と迷惑を」

「いっやマジで……自分の手柄じゃん要らないよ」

「わ、わかった」

「そんなの黙って貰っときなよ言わなくていいよ驚いたやめてよ」

「ありがとう……君は本当に良い奴だな」

「むしろお前にお小遣いあげた方がいいかって思ってたんだよ……なんかあったら言ってよ俺が解決できることで困らないでちょうだい」

「お金持ちなんだな……」

「まあ貯蓄はあるっちゃあるけど……ないっちゃない……お前と別れた後ここ住むようになるまでに結構頑張ってたから……もう嫌になっちゃったけど」


子どもが本の表紙を眺めながらついてきていることを確認していると、デュースが笑った。


「楽しかったな」


呑気にそう言うデュースに肩を竦めた。俺も楽しかったよ、と思う。純粋に。喜んでもらえてよかったし──俺は何もやってないけど──これから俺たちがどういう道を辿るのか、少しだけ掴めたような気もする。


「そしてお前はこれから近所中で噂になるから、それだけ覚えときな」

「な、……なんの噂だ？」

「お前が喋った通りの噂だよ。嫁と喧嘩して逃げてきたっつったんだろ？」

「ああ……聞いたのか？」

「俺はちょっと腫れ物だったけどお前は違うから……まあいいや体験しなよ……」


面倒くさくなって投げやりになると、また笑われた。

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