5話 怒号 ページ5
何事もなく仕事を終えて帰宅する。
そろーっとTRIGGERの楽屋を覗いたらまだ龍の姿があったから、楽には家を出たことはバレていないはずだ。
それでも慎重に小さな声でただいま、と言う。
しん、と静かな空間に落ち着きを感じてほ、とため息をついた。
―刹那
「おい」
「ひっ」
低く、恐ろしい声が背後から聴こえた。
恐る恐る振り返ると、眉間に皺を寄せてこちらを睨みつける楽がいた。
「が、楽」
「俺、寝とけっつったよな」
「……仕方ないでしょ。私が抜けたら、色んな人に迷惑がかかるのよ?」
「無理して行って、体調崩す方が迷惑だろうが」
「楽、私は」
「姉貴はアイドルである前に1人の人間だ!」
今までに聞いたことのないような怒鳴り声だった。
金縛りにあったように身体が動かなくなり、手先に痺れが走る。
「……部屋に行ってろ」
「……わかった」
これ以上反論すると、楽にまた無理やり部屋に連れていかれそうな気がしたので、大人しく部屋に戻る。
ベッドに潜る。
シーツの冷たさが身体を冷やしていくのを感じる。
ぶるぶると震えながらも丸くなって、温まるのを待った。
「姉貴」
コンコンとノックの音が聴こえて、楽が入ってくる。
「ホットミルク、飲めよ」
「あぁ、ありがとう」
我が弟ながら、気が利く。
そういえば、私が昔倒れた時に、父さんに怒鳴り込みに行ってたっけ。
「姉貴に無理させるな」って。
まあその時は、「体調管理も満足にできないアイツが悪い」って、バッサリ切られたみたいだったけど。
楽には悪いけど、この時は父さんの言う通りだなって1人で部屋で泣いていた。
楽もアイドルになってからは、自分のことで手一杯みたいだけど。
「…あったかい」
「ったく、龍の様子がなんか可笑しいと思ったらこれだよ」
龍のやつ、喋ったな。
一瞬龍を恨むが、彼の性格を考えると隠し通せるわけがなかった。
きっと気を遣って、楽に言ったんだろう。
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ききみ(プロフ) - kiraさん» はじめまして！ありがとうございます！！ (2018年3月6日 19時) (
レス) id: acfb49be03 (このIDを非表示/違反報告)
kira(プロフ) - はじめまして！最終話まで読みました！ もう感動です！！これからも頑張ってください！ (2018年2月17日 23時) (レス) id: 0dfb0f50b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ききみ | 作成日時：2018年2月1日 23時
