2話 心配 ページ2
楽屋に戻ってどかっ、と椅子に腰掛けた。
衣装が皺になることも気にせずにぼーっとする。
しばらくそうしていると、呼吸は次第に落ち着いた。
傍らにおいてあったペットボトルに手を伸ばす。
冷たい水が喉を潤した。
「…Aさん、失礼します」
「……九条くん」
おそらく自分の出番が終わったばかりであろう九条くんが、私の元に訪れた。
「今日はどうしましたか? 体調が悪そうでしたが」
「……そんなことないわ。いつも通りよ」
そう、いつも通りだった。始めは。
歌い始めた瞬間に喉が潰されるような感覚に襲われたのは事実だが、歌声にも特に目立った変化はなかったはずだ。
「楽が、心配してました」
「……そう、優しいわね」
弟の楽。
私のひとつ歳下で、私よりも売れっ子のアイドル。
そうなるように仕向けたのは、紛れもない実の父親だった。
「後で、会いに行ってやってください。じゃないと、いつここに怒鳴り込んでくるか……」
「天! 先行くな!」
九条くんが話している途中で、当の本人が現れた。
息を切らして私の元にずかずかと歩いてくる。
せっかくのイケメンが台無しよ。
「姉貴! 無理すんなっつっただろ! 終わったあとふらふらだったじゃねえか!!」
「…ごめんって。あんまり大きな声出さないでよ」
「１回倒れたことあんだから、ほんとにやめとけって!」
「まったく…楽は過保護ね」
楽は私の後を追うようにしてアイドルになった。
当時、私は父の期待を背負うのに必死で、自分のことを見失っていた。
唯一、私を気遣ってくれたのが楽だった。
疲れきってまともに食事もできなかった私に無理やりでも食べさせてくれていた。
楽が私と同じ世界に入った頃には、会話は減っていったけど、相変わらずの過保護を今実感した。
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ききみ(プロフ) - kiraさん» はじめまして！ありがとうございます！！ (2018年3月6日 19時) (
レス) id: acfb49be03 (このIDを非表示/違反報告)
kira(プロフ) - はじめまして！最終話まで読みました！ もう感動です！！これからも頑張ってください！ (2018年2月17日 23時) (レス) id: 0dfb0f50b9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ききみ | 作成日時：2018年2月1日 23時
