なんのための 土方side ページ7
「ホント、こんな時くらい甘えてください」と、Aは俺と目を合わさずに、視線を手で隠してそう言う。その声は、いつもヘラヘラしてて危なっかしいソイツから紡がれたものだとは思えないくらいの、響きを持っていた。
「……私じゃ、頼りないってんですか…」
土「それは……」
「別に頼りにさせたい訳じゃないですよ私だって」
俺の声をかき消して、Aは声を発する。布団の上で座りながら、俺はソイツの顔色を窺うように覗き込もうとするが、やはり手で隠れていて見ることは叶わない。
……まさか、コイツからこんなに心配の声をかけられるとは思っても見なかったもので、俺も呆気にとられてしまう。
「…でもこういう時に頼ってくれないと……、なんのための補佐なんですか私は…」
土「……」
…確かにそうだ。
俺がAを補佐にしたのは、まぁ当時はコイツの監視ということもあったが、次に俺の負担を減らすためのものであった。今はもう監視という部分は省かれているが。
「……私も、頼りないなりに頑張りますから、」
と、そこまで言うとAは不意に手を伸ばして人差し指を俺の額に当て、ピン、と立てた。
「……お願いですから今日は無理しないで寝てください。……貴方が本当に倒れてしまったら、組織全体に影響が出ることを忘れないでください」
それに、私だって困るんですよ、と。やけに真剣な、それでも優しげな視線に、俺はもう首を横に振ることなんざ出来るはずもなく。
土「……分かった。じゃあ……今日は頼む」
「…!」
ソイツからなんとなく目線をずらして、俺は自主的に布団に潜り込んだ。そこまで言われたら、休んでやらないこともない。テメー一人で仕事してヒーヒー言いやがれ。そんな悪態を内心つきながらも。
土「………でもまぁ、あんがとな……」
「…………」
土「……なんで黙ってんだ」
俺が珍しくもソイツに礼の言葉を述べてやれば、Aは立ち上がろうとしていた足を中途半端に止め、俺を見下ろしていた。怪訝に思い眉を寄せていれば。
「……ひ、土方さんって人にお礼言えたんですね…!!」
土「……お前、やっぱ切腹な」
……やっぱり、素直になるもんじゃねぇな。
驚愕に満ちた面を向けるソイツをひと睨みしながら、少しだけ後悔するのであった。
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のゆり(プロフ) - ピピコさん» いえ!私無類の土方推しでして!沖田の方の小説も楽しみにしています!これからも更新頑張ってくださいね! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - のゆりさん» のゆりさん!ありがとうございます!一気読みなんて嬉しいです!ご指摘もありがとうございました!なんて恥ずかしい間違いをしていたのでしょうか…!!助かりました!引き続きお楽しみ頂けたらと思います! (2018年1月4日 10時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
のゆり(プロフ) - 失礼します!このお話とても好きになりました!一気読みしてますー!えと、1つよろしいですか!「お話を選んでね」欄の「by土方」のbがdになってますよー!「dy」土方になってます!以上です、失礼しました! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 獅子の子さん» このシリーズの夢主ちゃんは本当に私好みの性格なのでそう言って頂けて嬉しいです^^私の理想そのものなので! (2017年7月24日 11時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピ…ピピコさんっ! どうしましょう、この小説、もちろんトッシーもカッコいいんですけど、夢主ちゃんのさりげない優しさに惚れかけてる自分がいます! どうしましょう!←2回目 (2017年7月24日 0時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年6月25日 15時