後悔は 土方side ページ47
土方side
……まだ空は青い。晴天の夏空は、憎たらしいほどに青く澄み渡っている。そんな空を扇ぎ見ながら、俺とAは並んで歩いていた。蝉の鳴き声が何処からともなく聞こえてくる。残り僅かの寿命を抱え、それでも懸命に生きようと叫んでいるようだった。
「……蝉って、裏返すとキモいですよね」
土「……そうだけど、なんか台無し」
そう俺が渋い顔をして言うも、ソイツは知ったことじゃないというような涼しい面をぶら下げている。まぁ、キレるほどのことではないし、そんなことのために体力を消耗したくはないため、呆れを滲ませた溜め息を一つついた。
『……彼女はきっと、幸せだと思います、私』
…そう、コイツは言った。アイツは、……ミツバはきっと、幸せだったと。本当の不幸せというのは、自身が死してもなお、誰も悲しまないことなのだと。それなら俺は、どうなんだろうか、なんてことを思いつつ、俺はタバコを取り出してはまた火をつけた。
「……土方さんまたタバコですか?そんなんじゃ土方さんも、早いとこ逝っちゃいそうですね」
土「うるせェ」
人生は太く短くだ。長ったらしく中途半端に生きるより、自分らしく生きる人生を俺は進む。
と、そんなことは置いといて、だ。
……後悔はしていない。あの時、「ついてきたい」と言ったアイツを、ここに留めたことも、俺がアイツの手をとらなかったことも。あれ以外の方法もきっとあったのだろうし、あれが最善策だったとも、俺は胸張って言えねぇだろう。だが俺には、あんなやり方しか出来なかったのだ。
それでもコイツは、『彼女は幸せだった』と言った。真っ直ぐに俺を見つめて。柔らかく暖かく微笑んで。
……いつか、Aとアイツは何処か似ていると思ったことがある。ソイツは多分、そういう所だったのだろう。
……何処か弱くて脆くて、それでもそれを覆すほどに強い。
そこがどうにも、似ている気がした。
「……土方さんが死んだら、沖田くんは大喜びでしょうね」
と。何の悪意も感じさせない笑顔を浮かべながら、悪意しか感じない言葉を発したAに、俺は薄っぺらい目線を向ける。そんな爽やか笑顔でよくんなこと言えるなコイツ。
土「……そうだな」
俺がもし死んだら、総悟の野郎はきっと跳び跳ねて喜ぶか、俺の骸を見ては腹抱えて笑うに違いない。そんなことを思っていれば。
「……まぁでも、土方さんが死んだら、私が泣いてあげます」
……そんなことを、ソイツはポロリと口にした。
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のゆり(プロフ) - ピピコさん» いえ!私無類の土方推しでして!沖田の方の小説も楽しみにしています!これからも更新頑張ってくださいね! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - のゆりさん» のゆりさん!ありがとうございます!一気読みなんて嬉しいです!ご指摘もありがとうございました!なんて恥ずかしい間違いをしていたのでしょうか…!!助かりました!引き続きお楽しみ頂けたらと思います! (2018年1月4日 10時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
のゆり(プロフ) - 失礼します!このお話とても好きになりました!一気読みしてますー!えと、1つよろしいですか!「お話を選んでね」欄の「by土方」のbがdになってますよー!「dy」土方になってます!以上です、失礼しました! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 獅子の子さん» このシリーズの夢主ちゃんは本当に私好みの性格なのでそう言って頂けて嬉しいです^^私の理想そのものなので! (2017年7月24日 11時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピ…ピピコさんっ! どうしましょう、この小説、もちろんトッシーもカッコいいんですけど、夢主ちゃんのさりげない優しさに惚れかけてる自分がいます! どうしましょう!←2回目 (2017年7月24日 0時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年6月25日 15時