ありがとうごぜーましたぁ〜 ページ11
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……一応土方さんに忠告された手前、念のため慎重に慎重におぼんに乗せたお粥を運んでいる。右足を庇いつつ、手元にも気を付けつつ。これを溢したら多分私に一番被害が来るのは分かりきっている。まっ逆さまになって頭からドプンだ。それはなんとしても避けたい。
ゆっくりゆっくりと歩を進め、漸く部屋の前へと辿りつき、開けていた襖を潜り室内に足を踏み入れた。そこにはちゃんと土方さんが待機していて。どうやら、この後に及んで脱走しようというバカな考えには陥らなかったらしい。
「お待たせしました。持ってきましたよ」
土「あぁ、転けなかったか」
「……えぇご忠告どーもありがとうごぜーましたぁ〜」
土方さんの軽口にブツリと何かが切れそうになる音をたてつつ、なんとか踏みとどまる。病人相手にマジ切れするほど、私は子供ではない。病人の挑発に乗るほど、私は単純ではない。
ひきつりつつも笑顔を張り付けながら、私は机の上におぼんを置いた。
土「そうか。てっきり調子乗って転けて頭から粥かぶってっかと思ったぜ」
「……ん?何ですか?お粥を顔面に叩きつけられたいんですか?」
…前言撤回。私は子供で単純です。もうそれでもいいから一回だけこの前髪V字にお粥クラッシュをお見舞いさせてくださいお願いします。完全に私の中の何かがブツリと音をたてて切れた。絶対に切れた。
「誰のために私が痛い足引きずってお粥取りに行ってあげたと思ってるんですかアンタは…っ…」
土「…オ、オイ、悪かったって落ち着けって」
沸々と沸き上がる怒りをなんとか押し殺しつつ、おぼんを持つ手に力が入りメキメキという軋むような音をたてる。それに土方さんは事の重大さを理解したらしく、慌てて取り繕おうとしている。
…クッソ。風邪が治った暁には絶対に仕返ししてやる。忘れた頃に100倍にして返してやる。
「…はあ……全く…」
大きく溜め息をつきながら、土方さんの横に腰を落ち着かせる。なんだろうこの脱力感。なんだって上司の看病をしてあげているのにこんな苛つかせてくれるんだろうか、この人は。
…まぁ、そういうことが出来るだけの元気は、戻ってきたってことかな。
そう捉えておくことにして、私は気を取り直しておぼんの上に乗っているお粥のお椀と蓮華をを手に取る。
湯気が立っているそれを蓮華ですくうと、土方さんは怪訝そうな顔をして「…何してんのお前」と首をかしげた。
…何してんのって、決まってるでしょうに。
「…はい、どうぞ。あーん」
土「いやあーんじゃねぇから!!!」
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のゆり(プロフ) - ピピコさん» いえ!私無類の土方推しでして!沖田の方の小説も楽しみにしています!これからも更新頑張ってくださいね! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - のゆりさん» のゆりさん!ありがとうございます!一気読みなんて嬉しいです!ご指摘もありがとうございました!なんて恥ずかしい間違いをしていたのでしょうか…!!助かりました!引き続きお楽しみ頂けたらと思います! (2018年1月4日 10時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
のゆり(プロフ) - 失礼します!このお話とても好きになりました!一気読みしてますー!えと、1つよろしいですか!「お話を選んでね」欄の「by土方」のbがdになってますよー!「dy」土方になってます!以上です、失礼しました! (2018年1月4日 10時) (レス) id: b3b81574c1 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ - 獅子の子さん» このシリーズの夢主ちゃんは本当に私好みの性格なのでそう言って頂けて嬉しいです^^私の理想そのものなので! (2017年7月24日 11時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
獅子の子(プロフ) - ピ…ピピコさんっ! どうしましょう、この小説、もちろんトッシーもカッコいいんですけど、夢主ちゃんのさりげない優しさに惚れかけてる自分がいます! どうしましょう!←2回目 (2017年7月24日 0時) (レス) id: d0488b3ee5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年6月25日 15時