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だが、どうやら稀代の名探偵は興味が無いようで、ふーん、と言って私と新人君の顔を見たあと机に向かってしまった。




『…ま、まぁ兎に角もよろしくね、困ったら声掛けて』
「ありがとうございます!ふた…Aさん!」



彼が差し出した私の手に気付いて握ろうとした時、


「Aー!喉乾いた!干からびて死んでしまう!」



『…先程ナオミちゃんがお茶を差し入れてましたよ、まだ頼めば出してくれるんじゃ』
「僕はお茶を飲む気分じゃないんだ!」

…はぁ。

頭にはてなを浮かべる敦君をこのまま太宰さんに任せて、渋々冷蔵庫の方へ足を向かわせた。全く乱歩さんは。やけに太宰さんが感激したような言葉を述べていたが、どうでも良さそうなので右から左へと聞き流しておいた。













あれ、もう在庫なかったんだっけ?



野菜室を覗いても見当たらないラムネに冷や汗が伝う。
最近春野さんにずっと任せっきりだったしな…。もしかしたら冷蔵庫じゃなくても何処かに買い貯めてあるかもしれない。
上の方の棚に手を伸ばした時。後ろから誰かが覆い被さって先に戸棚を開けた。







「遅い」




『…すみません乱歩さん。こっちに来てまでどうかされました?』

「Aがあまりにも遅いから心配した」





『それはすみま………、え?』


思いもよらない発言に吃驚してすぐさま真後ろにいる彼の方を振り向く。心配?あの乱歩さんが?、?心配する程の事じゃないのに?

『心配って、飲み物探しに行っただけ…ですけど』
「君は非常に間抜けだからな、僕の目から離れると不安になる」


『そ、そうですか』

ただでさえ近い距離に緊張するのに、鼻と鼻がくっつきそうな位まで距離を詰められる。翠色の瞳と手で逃げられない様に囲われて、少し恐怖すら覚える。





「ねぇ、なんでだと思う?」


「どうしてこの僕が君にこんな事すると思う?」


怖くなって肩を押そうとするも上手い具合に手を取られて必要に指を絡められるしどれだけ目線を逸らしても翠色の瞳は追ってくる。




『わか、りません』



きっと頭の良い彼だったら最善の答えを出せるのだろうけど私にこの行動の意味はさっぱりだ。彼の恍惚とした表情も、此の前まであったはずのラムネの在庫も。











「それでいい」


乱歩さんはふっと鮮やかに笑って頭を優しく撫でた後、ラムネは要らないと言って去っていった。

私はそれから少し経った後、しゃがみ込んで煩い心臓を窘めた。

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- 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時

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