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私はしがない武装探偵社調査員、二葉亭A。
今日も今日とて重い身体を起こし、探偵社へ出勤するところだ。うーん憂鬱。
『嗚呼…また一週間が始まってしまった』
靴を履きながら爪先でトントンと床を打ち、ぐるりと部屋を確認する。忘れ物無し。
仕事が嫌いな訳では無い。出勤が面倒臭い訳でも無い。社員寮で近場にあるし。ただ休み明けは皆同じ気持ちだと思う。
とは言っても時間は刻々と迫ってくるので、力の入っていない腕で扉を押した。
『いってきまーす…』
「行ってらっしゃ〜い!!!!!」
『うわっ!!!!』
気だるげに開けた扉の先には、なんと満面の笑みの太宰さんが佇んでいる。扉の鼻先スレスレに居たものだから思わず尻餅を着いてしまった。じーんと響くお尻を涙目で擦る。
『いたた〜…!お、おはようございます…?』
「うんおはよう」
尻餅を着いた私に手を差し伸べて、そのご自慢の整った笑顔で見つめてくる。穴空く。
『どうかされました?色んな意味で』
「朝からAちゃんはAちゃんだねぇ、ただ送り出してあげようと思っただけだよ。仕事にね!」
『送り出すって…貴方も仕事に行く側でしょ』
手を握り、簡単に埃を払うと私は扉の鍵を閉めた。隣の彼は相も変わらずケタケタ笑い、そうだった!なんて笑い飛ばしている。
心底この人の上司でなくて良かったと思う。世話所か目にも入れたくなくなりそう。
「本当は心中のお誘いも兼ねてたのだけどね、そうそう、社員寮での心中はどうかな?皆に囲まれながら心中…素敵だと思わないかい?!」
『思いませんし心中もしません。てか皆に迷惑かけるのはクリーンじゃなくないですか?』
「君がそう言うなら取り消そうか。んじゃ他にはね〜」
1人で趣味について大きな身振り手振りをしながら幸せそうに語る太宰さんを横目で見ながら歩く。このまま探偵社に着けば国木田さんに引き渡してあっさり終わられる。
いつもご苦労様です。ありがとう国木田さん
「まぁでも君と心中したいのは本望なのだけど、後が怖いからねぇ」
『後?地獄行きな事ですか?』
「君本当に容赦ないよね、私が地獄に行ったところで恐怖なんて感じると思うかい?」
『確かに…』
「それにね、地獄、天国なんて人間の欲望で作られたものなんだよ。」
途端に風が吹き込み、バサリと砂色の外套が舞った。
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時