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『寂しいだろ。』 ページ31

太宰「なんだい...今日なら死ねると思ったのに。」

そう吐き捨てた彼を見て、凄く苦しくなった。


何故そんなに生に無頓着になれる。

何故明日に焦がれない。

何故未来の先を見ようとしない。

そんなことを思ってきたが、今確信した。


嗚呼、こいつはもう


退屈に染まってしまったのだと。



自分に生きる意味が見いだせていないのだ。




生きる理由が、ないのだ。



『なあ、治。私は雨が嫌いだ。だから、もう帰ろう。』


太宰「...私をこのまま置いていってくれないのかい。」


『出来ない。』


太宰「何故だい?」

真っ黒に染まった瞳には虚ろしか見いだせない。
でも、私はこいつの違う瞳も知っている。


『私はお前がいなきゃ、寂しい。』

少しふざけた時の、少年のような瞳も知っている。


太宰「私がいなきゃ、寂しい?」

『ああ。』

太宰「ずっと?」

『きっと。』

太宰「そっか。」

『...うん。』

太宰「じゃあ...帰るよ。仕方がないけど...君が寂しいっていうしね。」

『...そうだな。』



そうだ。寂しいよ。

お前は知らないだろう。

残される気持ちを。一人で唯生きる世界を。


残していく側は狡い。


最期に相手の幸福を願う言葉という


相手が死ねない呪縛をかけるのだ。


相手が生きるしかないように。





あの施設で自刃していたのは



全員私の友人だった。


皆檻ごしで、特に私は最深部に隔離されていたが、


こっそり脳内を繋ぐことの出来る少年が

私達を繋いでくれた。


苦しくたって互いの言葉が希望だった。




彼等が自刃したのは、無理な研究の結果自分達の寿命が残り少ないことを知ったからだった。


だから、私の異能力で自分達の死を代償に



組織の壊滅を望んだ。




力を最大限に使った彼等は地下の格子牢から私を連れ出し、
私の異能力発動と同時に腹を引き裂いた。

私は最初から後を追う積もりだった。


私の異能力は、本人が死んでも続行される。


しかし、短刀を突き立てようとした瞬間、移動能力を使える少年が私を路地裏へ飛ばしたのだ。


―生きて。




それだけの言葉と共に。



勢いが鈍った。


だから首領に取り押さえられた。



結局は呪いが発動するのを待ちきれず、即刻制裁を加えに組織へ出向いたが。

今思えば、あれは少年が狙ってやったのだろう。




何故。そう思った。でも今ならわかる。

『死なれたら、寂しいよ。治。』


寂しいよ。自分が死んだあとでも、死なれるのは

きっと、寂しいよ。


そう云いながら、ずぶ濡れの腕でずぶ濡れの青年の頭を抱き締めた。

「彼女は存在しなかった。」→←『うわ凄い降って...さっむ!?寒いっ!!!!』



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作品ジャンル:恋愛
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白い雪(プロフ) - 歩くん(声優の)の弟子になりてぇさん» 中也は母性的な皆のオカンです(( (2018年5月14日 22時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
歩くん(声優の)の弟子になりてぇ - 中原様!いや!お母様! (2018年4月29日 12時) (レス) id: 03a9e9d04f (このIDを非表示/違反報告)
白い玉(プロフ) - 今私も思いました← ちなみにボイスだけのですが、ポートマフィアが温泉に行ったときは、芥川に対して存分にオカンっぷりを発揮していますよ!笑 (2018年1月28日 14時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)
狂夜 - 中也はオカンですね← (2018年1月28日 12時) (レス) id: f9f696dea3 (このIDを非表示/違反報告)
白い玉(プロフ) - 漆黒夜叉さん» ありがとうございます!!マフィアだと女子っぽいキャラは生き残れなさそうだなーと思った結果です(笑)すると花瓶を躊躇なく投げるキャラに← 更新頑張ります! (2018年1月25日 0時) (レス) id: b06dc51979 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:白い玉 | 作成日時:2018年1月16日 13時

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