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女は一人部屋でため息をつく。
憂鬱の原因となっているメールの受信履歴は削除済みだ。
外は酷い雨だ。
電気さえ付けていない部屋で、障子ごしに入る弱々しい光が彼女の肌を蒼白く照らした。
「仕事が遅い、だって。ふざけんじゃないわよ」
あたしが一体どれだけアンタたちに尽くしてきたと思ってんのよ。
今まで一晩で殺せてたのは基本的にみんな女にだらしがない役人一人ずつだったからじゃない。
3人も殺せなんて、そんなすぐにうまくいく訳が無いじゃない。
こっちにだって準備ってものがあるんだから。
女は頭を掻きむしる。
違うのに。本当はそうではなくて。
あたしは本当は誰も殺したくない。幕府を腐らせている人間だろうと、アイツらにとって邪魔な存在だろうと私には関係ない。
あの人から教わったこの技は、そんなことの為に使うはずじゃなかったのに。
でも、それでも。
あの人が守ってくれた、遺してくれた、彼のことだけはせめて守らないと。
そのために必要なことなら何だってやる。
「大丈夫。
絶対にあたしが守るからね。
どんな汚い手を使っても。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時