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新八によると、中島一二三は元々弟子を取るようなことをする人間ではなかったらしい。
かつてはどれだけ名声を得ても弟子だけはとらないことで有名な人物だった。
しかし、約10年程前にいきなり弟子を一人とった。しかも弟子が志願したのではなく、一二三自ら引き入れたと言われている。一番弟子は当時10歳程の少女だった。
それ以来一二三のところには数多くの絵描きを志す者が弟子入りを志願してくるようになった。あまりの多さに、一二三は対処策として画塾を開き、数年に一度志願者を一括で試験することにした。
「その試験が馬鹿ほど難しいらしいんですよ」
試験内容は実技と面接。
しかし一二三はそもそも試験の出願書類が気に入らないと試験すら受けさせない。面接でも少しでも気に入らないことがあれば落とす。さらには入門できるだけの絵の技術も必要だ。
「あんな難しい試験、通ったってだけでもエリートですよ。数回に一人くらいしか合格者出ないのに」
「ふーん」
「ぱっつぁん。そんなことより朝ごはんがまだアル」
詳しい説明を聞いても銀時と神楽はまるで興味が無いようだ。
さすがに新八もそんな二人には慣れているのでいちいち文句を言ったりしないが。
「え?食パンでいい?」
「嫌ヨ私は朝米食べないとやってられないアル」
その言葉に「何言ってんだ」と口を挟む銀時。
「一体何週間依頼が来てないと思ってんだ?うちの米櫃は空っぽなんだよ」
「ちぇっ。じゃあパンでいいアル。新八焼くヨロシ」
「我儘言った割りに折れるの早いね……」
新八が食パンを焼きに行ってすぐ、事務所の電話が鳴る。
もしや、久々の依頼だろうか。3回目のコールを待たずに、銀時は受話器を取った。
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作者名:mire | 作者ホームページ:http://id27.fm-p.jp/456/0601kamui330/
作成日時:2020年10月10日 22時