その背中に触れたい【虎杖悠仁】

21.強い意志の太刀筋 ページ23

私の目の前にはいつも
悠仁の背中があった
私が危ない時
いつも颯爽と私の前に現れて
その背中が私を守ってくれてた


けど、私はもう
守られてばかりの泣き虫のAじゃない


悠仁のその背中に
届きたいの





『悠仁！！』



「A！？」







私の術式は
「貌好花」を発動させた上でないと
相手を酩酊状態にさせる「妖花」は
発動できない仕組みになっている

そして微小な呪力で足りる「貌好花」に対して
「妖花」は一定時間相手を
ほぼ戦闘不能にさせる呪術なので
消費する呪力も増える

だから長期戦になる場合は
「貌好花」のみを使うことが多いが
こういう、相手を手早く戦闘不能にさせなくてはならない場合は躊躇わず使う







ドンッ


と地鳴りがするほど強く地面を蹴り
一歩で銃を持つ女の元まで行く


そいつが振り返るより早く
斬鉄剣を引き抜き
音も立てず銃は縦二つにバラけた


「え？」


木から地面への着地とともに
向かい側にいる弓を持った男を対象に
術式を発動させる


『妖花』

「…くっ」


弓男の脚がふらつき
地面に尻をつくのを確認

茂みからロボットが悠仁を狙っているのが見え
ロボットの腕を縦に一振り


「な…！？」


手腕は真っ二つで攻撃は不発

太刀を持った水色の髪の女が
悠仁に攻撃しようとするのが見えたが
悠仁の前へ庇いに入り
キーーンと音を立てて太刀の女の攻撃を塞いだ



「この速度に反応するの…？」

『悠仁、無事？』

「え？お、おう
おかげさまで……」


太刀の女が一歩下がり敵意を向けなくなったので
斬鉄剣を鞘におさめた


「一瞬デ…」

「私の銃、鉄なんだけど…」


『そんじょそこらの刀と違うんだよ
斬鉄剣の中でも名刀中の名刀

天鉄刀(てんてつとう)

鉄を切るのなんか容易いわ
壊してごめんね
なんて言わねーからな』








悠仁side



囲まれたと思ったら
視界の端に青紫色の花びらが舞ってるのが見えて
Aが俺を呼ぶ声が聞こえた

そこからは一瞬だった
目で追うのが精一杯なほど速くて

でも、Aの太刀筋は
舞のように綺麗だった



俺がちゃんとAの戦闘を見たのは
今日が初めてだったけど
こんなに強かったなんて



「すげえな、A。助かった。」


目の前の華奢な背中にお礼を言うと


『おやすいごよう！』


振り返ったその笑顔が
あまりに無邪気で綺麗で


心臓が急に忙しなく
俺の胸を叩いた

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