あゝ美しき月へ (ページ3)

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旅立ちページ3

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「おはようシア。」

朝起きて、いつものように、使い魔のシアに声をかける。

ーおはよう、ソアレ。ー

彼女もまた、返事を返してくれる。

シアは大切な大切な黒猫だ。

でも、彼女を儀式には連れて行けない。

今日は私の旅立ちの日。

この村の一番の魔力の持ち主になった一年目の誕生日。

ソレイユの杖を片手に、今日はみんなと別れる。

顔を洗って下に降りれば、〝いつもの〟食事が待っていた。

「いよいよ今日ね。回復魔法、復習しておいてよ。あ、ノート持ってくようにしたんだっけ。」

「持って行くよ。万一の事もあるしねっ！」

こういう時に、いつものように接してくれる母は、いつもより優しく見えた。

ご飯を食べ終わって、歯を磨いて着替える。

今日は、村の民族衣装。

特別な日だから。

____今日でお別れか。実感わかないな…。

そんな事を思いながら、最後の準備を終わらせ、泣かないようにぐっとこらえる。

ー涙は村を出てから。ー

昨日からずっと決めていたことだった。

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「皆の衆!!!よくぞ集まってくれた!!!」

この村を治める長老、イヴアル様が、今日も声を張り上げる。

「今日は待ちに待ったソアレの新たなる魔力解放に向けて旅立つ時である !!!」

テントの袖からちらりと村人達を見ると、涙ぐんでいる人も見えた。

私の友達なのだけれど。

そんな事を考えているうち、イヴアル様が私を呼んだ。

一見怖そうなお爺さんに見えるけれど、優しい眼をしていた。

悪戯して怒られたことを思い出す。

彼は小さな身体で、この村の住人を治めているのだ。

あぁ、さようなら。

「皆、今までありがとう。いつか戻ってくるよ。それ迄の辛抱だから。」

そう言い、私は開いた村の門の前で足を止める。

絶対帰ってこいよお！

元気でねぇええ！

また会おうねえ！

なんて叫び声が聞こえる。

「ありがとう! ! 行ってきます! !」

手を振って、ひと粒の涙が眼からこぼれ落ちるのと同時に手を下ろした。

「あぁもう、ダメだな。村にいる間は泣かないって決めたのに。」

そう呟いて、境界線を越えた。

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