【ツキウタ】信じたモノを守り抜け【文スト】

24話・一歩ずつだけど ページ42

……返事が、ない。
それを少し、少しだけ不安に思いながら、無用心らしくドアが開いているみたいなのでお邪魔させてもらう。

部屋に入れば、ふんわりとした美味しそうな匂いがした。最近食べてないから、それに惹かれたのもあるだろう。靴を音のないように素早く脱いで、部屋の内部へと行った。
…玄関にあった靴は三つ。一つは自分、一つは神無月。もう一つは…サイズ的に年上、デザイン的に男だろう。普通のスニーカー、か。楽に動けるのが好きなタイプか？

「すみません、朝ご飯まで作ってもらって…」

「気にすんな気にすんな、料理は人のために作った方が美味しくできるからな」

「海さんらしいお答えですね」

「そうか？」

かい…？…待った。この声、あのビルので居た人だ。海って、そう言えば呼ばれてた。マズイ、このままだと敵だとバレる。早く、部屋から出なければ。
…けれどこのチャンスを逃したら、もう二度と、神無月の家に来る勇気が出なくなる気がする。頑張らなければ。これが最初で最後のチャンスなんだ…！

「＿神無、月…？」

「あ、ミナヅキ！おはよ。お前も来いよ、一緒に食べない？」

「んお？…ミナヅキってことは、ポート・マフィアの？」

ほら。やっぱり、バレた。…もうこの際、死んでも構わない。スタスタと歩いて、神無月の近くに座った。

「…はい。俺が昨日スカウトしたんです、今日から仲間ですから、安心してください！」

僕が隣に座るなり、神無月は海にそう言って笑った。
…すか、うと？なかま？…確かに、この世界で生きてみたくて、神無月と過ごしてみたいって、思った。けど。
…確か神無月は異能力持ち。異能力ってことは、武装探偵社か？なら、敵社？それならほんとにスパイみたいだ。

「おぉ、マジか！俺は文月海だ、それでこっちが…」

「改めて、神無月郁。………涙、宜しくな」

＿＿何で、分かった？
まだコードネームしか伝えてないはず。…郁には、不思議がいっぱいだ。

「…う、ん…。…水無月、涙。…宜しく…」

海と郁は、顔を逸らして言う僕に、「おうっ」と笑ってくれた。

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