◆１３． ページ13
もう少し寝れたのに、と眉間に皺を寄せて言うAに声を掛ければ彼女の顔は緩んだ
ああ、その顔が本当に狡い
Aが思っているより、俺は彼女の笑顔に言葉に弱くて
俺が思っているよりも、Aは俺に弱いのかもしれない
お互いに小さい頃から一緒にいるのが当たり前で
幼稚園、小学校
当たり前の様に休み時間は一緒で
遊ぶのも一緒
親同士の仲が良かったのもあるけど、それ以上にお互いに信頼を置いている
その中だったからかAは俺の事を疑う事を知らない
今だってそう
家に勝手に入ってるけど理由を言えば簡単に許す
他の人にはしてないとは思うけど、少し心配にもなる
話を戻すけど、疑う事を知らないからか俺の言葉には素直に従う
『恋なんてめんどくさいだけやで？リンは俺の隣にいるだけで楽しいやろ？』
この言葉は昔、小学生の頃だったかAが好きな人が出来たと俺に言って来た
俺はその言葉に顔を顰めた
我ながら小学生の癖にこんなセリフ言ったなとは思う
でも、Aはその言葉を真に受けて
『確かにね！私、鬱といるだけでいいや！』
と言っていたのを覚えてる
無邪気で、穢れを知らなくて
その内誘拐でもされてしまうのではないかそんな事を思っている事もあった
まぁ、今は抵抗はできるだろうが男だったら勝てないだろう
だから、俺が居るんや
数年間会話もしてなかったけど、今は近くにいる
守れる
俺はAの事が昔から異性として幼馴染として好きやった
”やった”やなくて今もやけどな
Aは俺の事をどうとらえているのだろうか
俺の気持ちを知ったらどういう反応をするのだろうか....
「...う....つ！...鬱！」
いつの間にかAの顔が近くにあり、大きな声で名前を呼ばれた
どうしたのか聞くと
「だって時間だし、名前呼んでも反応しなかったから......」
と、首を傾げて不思議そうに顔を覗いて来た
「ごめんな
Aの事考えとった」
今まで考えてた事は全て吹き飛んでAと会話する
俺が「Aの事考えとった」と言うと、分かりやすく照れたのが分かった
そんなAが愛おしくて溜まらないが顔には出さず、荷物をもって2人で通学路に並んだ
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