ブルドッグ《Takuya side》 ページ3
江「そうだな。でも今は違う。……ずっと不思議だったんだよ、どうして俺は千里が好きになったのか。男の俺よりかっこよくて、痩せ型で、スイーツばっかり食べてるお前のどこに惹かれたんだろうって」
「答えは……?」
江「たぶん、ずっとこの人といたいって思えるやつだったから。この人を笑顔にしたい。この人に泣いててほしくない。そう思ったから」
「それだけ……?」
江「好きでい続ける理由なんて、それで十分だろ」
「………」
江「……さっき、怖いって言っただろ。幸せになるのが怖い。夢から冷めるのが怖いって」
「うん」
江「俺もそうだったよ。俺の告白OKしてくれた時、初めて手を繋いだ日、隣で寝てるお前を眺めてる時間。幸せって感じる度、これは夢なんじゃないかって、明日になったら全部消えてるんじゃないかって、夢なら覚めないでくれって思う時がある。
だから不安になって、嫉妬して、無性に独り占めしたいって考えちゃう。こんなの全然俺らしくなくて調子狂うけど、それくらいお前が俺の中で大きな存在ってこと」
多分だけど、千里はお母さんのかわりを探していたんだ。
『この人の為に頑張らなきゃ。この人の為に何かしなきゃ』
そういう存在をずっと探していた。求めていた。
いいよ、なってあげるよ。俺がその役引き受けるから。
だから俺にも君を守らせて。
いつも情けない俺の何倍も男前な友達を。
追いつきたいと必死だった憧れの役者を。
押しに弱くて人一倍優しい綺麗な女性を。
俺にはもったいないくらい最高の彼女を。
江「大丈夫。俺は俺の意思で俺が決断して千里のそばにいるんだよ。どう?俺に愛されてる自覚出てきた?」
「拓也はほんとずるいね。かっこいいったらありゃしないよ」
江「いやいや、俺の彼女には負けますよw」
「…あり、がとう。おかげで……」
江「おかげで?」
「今、超幸せ」
江「………そっか、それはよかった」
「うん!」
この子が抱えているものを一緒に抱えられる人になろう。
この子が守ってきたものを一緒に守れるような人になろう。
この子が辛い時は『おつかれさま』って背中をさって、この子が喜んでる時は泣いてお祝いをしよう。
この子が苦しい時は『もういいよ』って抱きしめて、この子が悲しんでる時は精一杯笑って励まそう。
そんな事を想った、やけに静かな四月のある日。
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時