四月の天使に叶え【江口拓也】3 (ページ15)

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エルクスオウン《Takuya side》ページ15

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裏返る声を抑え、ゆっくりゆっくり、言葉をしっかり選んで喋り出す千里。もう三十いくつもなるのに、まるで小さな女の子のようだ。

江「………ゆっくりでいいよ。ちゃんと聞いてるから」

「…………私は、わがままだから、欲張りだから、大切な人のことを好きな人にも、私のことを好きでいてほしいんだ。嫌われたくない。離れてほしくない。私のことを好きでいてほしいし私のせいで大切な人を嫌ってほしくない」

江「うん」

「どうしたらいいんだろうって考えて考えて………でもわかんなくて。どちらも手に出来ないなら、守れないなら、救えないなら………今のままならいいのかなって……」

江「そんなこと、考えてたの？」

俯いてしまった千里に聞く。前髪の奥で涙を流してるのがわかる。

江「千里」

恐る恐る顔を上げる千里の頬に優しく手を添えると、千里はビクッと震えた。

江「大丈夫……じゃないかもしれない。

ファンを傷つけて、悲しませて、もう嫌いだって言われるかもしれない。千里の言うように、好きじゃなくなったって離れていってしまうかもしれない。
俺だって怖いよ。嫌われるのは嫌だし、進むのは怖いし、出来ればいつまでも好きでいてほしい」

一度言葉が切れ、また話し出す。

喉が詰まって、上手く息が出来ないけれど。全然考えがまとまらなくて、とても不格好だけれど。この気持ちが、俺の思いが届いて欲しいと力を込めて。

江「それでも、千里を手放すくらいなら俺は何千人に嫌われたっていいって思ってるよ。それに千里がファンが大事だって言うなら、千里のファンごと大切にするから」

「拓也が、辛い思いをするのは…いやだよ……」

優しい女の子なんだ。臆病で、お人好しで、泣き虫で。

自分の大切なものをぎゅっと抱きしめて、傷つかないように傷つかないようにって、いつも守ってる。

それで自分が傷ついてるって、分かってるくせに。