クロンダイククーラー ページ14
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「……あの、なぜ私は正座で座らされてるんでしょう……」
江「なぜ?わかんないの?」
拓也さん、すごく怒ってらっしゃる。
「えっと、梶さんとふたりでランチしてたことですか?」
江「違う」
「じゃあ……、勝手に人に相談したことですか?」
江「違う」
「……あ、今朝のことですか。変な感じで出ていったのが悪かった?」
江「違う。いやそれもちょっとあるけど、今はそんなのどうでもいい」
え、いいんだ。
江「俺が怒ってるのは、どうして梶さんの前であんな泣きそうになってるのってこと。……というかもう半分泣いてたし。俺言ったよね、悲しい時とか苦しんでる時は俺が励ますって」
「…………いや聞いてないけど」
江「あれそうだっけ?……とにかく!たとえ俺が原因だとしても、俺を頼って…?」
「………」
江「結婚が嫌ならまだ待つし、発表だってそんだけしたくないなら俺も我慢する。本当は心底みんなに言いたいけど我慢するから。だから……俺がいないとこで泣かないでよ……」
さっきとは打って変わって、おもちゃを取り上げられた子供みたいに弱々しく私を見つめる拓也の目は少し潤んでるように見えた。
「………ごめん」
何を言えばいいのか分からなくて、なぜかポロッと口からこぼれた。
江「……なにがだよ…」
やっぱりぐずる子供のように拓也が返す。
「いや、えっと……あー……なんか、えっと……わかんない、です」
江「なんで敬語なわけ……?」
「えっと、えっと………」
次の言葉が出てこない。言い訳するみたいに『えっと、えっと』を繰り返してしまう。これじゃあ私も子供じゃないか。
すうっと息を吸って、逸らしてしまった目を拓也に向ける。拓也も見つめ返してくれる。
「わっ、……たしは……」
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年5月7日 20時