スティンガー《Takuya side》 ページ24
「なあ拓也、これどうするよ」
江「ざっくりだな……」
この学校に入学してきて、しばらくたった頃。この学校は授業の一環として一週間に一度、数個の課題文の中から選んでペアになって読む…というものがあった。
その時のペアも残念ながらこの卯月 千里。
課題文のことでカフェテラスに来て話し合っていたが、数枚の課題のプリントを並べて思いのほか煮詰まっていた。
「まさかここで同性とは……」
江「今まで男女の選んできたもんな」
5枚のプリントのうち、どれもが女子同士か男子同士だ。
江「諦めて別のペアを探すべきじゃない?」
「……なあ拓也、お前はともかく私に友達がいると思うか」
江「まあいないな」
「誠に失礼だが、その通り。これまでの課題を全部捨てて今更ペアを変えてやるなんてリスクが高すぎる。どうやっても私とお前でするしかないんだよ」
江「つったって……」
「拓也女声できる?」
江「無理」
「即答……」
江「オカマさんならどうにか出来るけど、完璧に女性は無理だな」
「………しょうがない、じゃあ私が男をやるよ」
江「え、まじ?出来んの?」
「それしかないだろ。最初だし当たって挫けろ……ってことで」
江「それ砕くだし。つか挫けちゃだめだろ」
「しゃ、頑張ろ」
江「おう」
ぶっちゃけ、この時の千里の演技力はずば抜けていた。
息の出し方、ブレスのタイミング、セリフの言い回し、感情の起伏……全てが規格外。練習より、今までより何倍も、……いや、もう別物だ。
隣に立つ素人の俺が感じたのだから、講師の先生はもっと感じただろう。
江「おい、あれなんだよ」
「………ごめん、突っ走りすぎた」
江「は?」
「もっと上手く……」
『上手く』……?
上手く合わせられた?
上手く下手に見せられた?
上手く新人らしく演じられた?
江「……今まで、手を抜いてきたのか」
「違う!……全部全力だったよ」
江「じゃあ、なんで………あんなの、だって……」
「………ごめん」
江「………」
諦めてんのか、それとも俺ならって信じてんのか、何も言わない千里。言い訳しようとしない。笑って誤魔化そうともしない。
俺はあいつと、俺自身を見ていられなくなって席をたった。
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りさ - ななき。さん» こちらこそ! (2019年2月5日 21時) (レス) id: 41b914f6ac (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - りささん» ありがとうございます!ではまた、これからもよろしくです! (2019年2月5日 21時) (レス) id: 6cf8ba9d16 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - ななき。さん» ぜひやりましょー!またお誘いします! (2019年2月5日 21時) (レス) id: 41b914f6ac (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - こちらにもコメントありがとうございます!とても励みになります!ぜひぜひ、やったことはないですが、時間が出来たらやってみたいと思ってます。またお誘いしてくださると嬉しいです! (2019年2月5日 20時) (レス) id: 6cf8ba9d16 (このIDを非表示/違反報告)
りさ - お話読ませていただきましたー!続き楽しみに待ってます!機会があればリレー小説一緒にやりたいです! (2019年2月5日 20時) (レス) id: 41b914f6ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年2月4日 19時