ななじゅうろく《mahu side》 ページ28
沈黙が続き、破ったのは意外にも天ちゃんだった。
天「まふはいつも誰よりも幸せになる権利がある」
ま「え？」
天「まふは何者にも縛られないで恋愛する自由がある」
ま「………」
天「まふはもう無理だって諦めるのも、もう出来ないって挫けるのも、今まで何度かあった。でもその後たいてい、いや絶対それ以上の形でみんなの期待に応えてきた。………自分の色んなものをけずってでも」
天ちゃんは少し目じりを下げて笑う。
天「正直おれは、どんな結果になってもまふにはよくないことになるかもって思ってたよ」
ま「………どうして？」
天「自分でも言ってたじゃん。『僕は恋愛したら終わりな気がする』って。でもあの人なら、そんなまふを支えて、寄り添って、高めてゆけるんじゃないかなって思った」
ま「………」
天「正直どっちの気持ちもある。これは紛れもなくまふの問題だ。だから友達から言えることを言うよ。…………どうか、後悔だけはしないで」
主人公だなって改めて感じる。真っ直ぐな目と、声と、真剣な表情。僕にはとうてい真似できやしない。
ま「ありがとう。Aが向こうに行く前に、もう一度伝えてみるよ」
天「………うん」
ふたりが自分の部屋に戻って、そらるさんとふたりきり。真っ暗な部屋になった。
布団から左手を出して真上に上げてみる。そこには何にもなくて、ゆっくりおでこに置く。
未来が見えなくて、怖くなって、眠れなくなることはよくある。悩みが晴れなくて、次から次へと不安の種が現れて、いつまで経っても消えてくれない。
『いつでも頼ってな』…って、ルスくんに頭を撫でられたような気がした。
『ここで勇気出さないでどうするんだよ』…って、そらるさんに背中を押された気がした。
『きっと幸せになって』…って、天ちゃんに肩を抱かれた気がした。
僕たちの間にはいくつもの階段があって、かつては同じ段差の階段の、同じ段数を踏んでいた。
今、僕達の間にはどれほどの段差があるだろう。
"あの時" 引き止めていればよかったって考えてしまうのは、また僕が弱い証拠。
逆に彼女は "あの時" 『いいんじゃん』の言葉の裏に何を隠していたんだろうか。
次がラストで、もう一度で、諦めきれるだろうか。
───
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ちょこ - とてもよかったです！その後話が欲しい！ (2022年2月21日 4時) (
レス) @page41 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - コメントありがとうございます！言い回しに惚れられたなんて初めてで驚きです笑タイトル通り淡い色の作品にしたくて作ったので伝わってるみたいで嬉しいです！友達から始まる恋もいいですよね(^^)またどこかでお会い出来ることを願ってます！ (2020年6月26日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ(プロフ) - ななき。さん» 作者さんの言い回しに惚れました…。多種多様な色の中の一つを描いたような物語で思わず一気読みしてしまいました…。不器用な2人が周りの人達によって変わっていく姿を見て、友達って大切なんだなぁって思いました。これからも頑張ってください！ (2020年6月26日 19時) (レス) id: b0d67d134f (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - LiLi Kaさん» コメントありがとうございます！感動していただけたなんてうれしい！はよくっつけ！ってなりながら書いてました笑 (2020年5月20日 19時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
LiLi Ka(プロフ) - すっごくよかったです！感動ものですね！泣きましたぁぁぁぁ (2020年5月20日 8時) (レス) id: ef0b88e85e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2020年4月9日 10時
