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弐拾漆 ページ28

?「──へぇ、大学生なんだ。たのし?」

「まあ、覚えることはたくさんありますけど、知識が増えるのは楽しいですよ」

?「いい事だね。お兄さんもひとり暮らし始めた時はいろいろ大変だったなぁ」

「やっぱそうなんですかねぇ」

?「実家暮らし?」

「いえ、兄とふたりです」

?「不服そう。親に止められたんだ」

「そうです。よく分かりましたね」

?「俺も妹いるから。大切にされてるんだね」

「………どうなんでしょ」




口から漏れたのはため息か吐息か。へらっと笑うと、お兄さんも困った顔をした。それから優しく微笑みかけられる。




?「大切にされてないと思ってるの?」

「大切なのは私じゃなくて、私の中にあるもっと別のなにかじゃないかと」




例えば己のためだとか。


特別になりたいと思うことは普通のことだ。でも自分は特別な存在なんだと思っちゃいけない。それは自分勝手な傲慢であり、ただ哀れな行為でしかない。

分かってる。でも特別って思うことが許されないのなら、最初から期待なんてしないでよって。




「こんなこと思うなんて、子供っぽいですよね」

?「そんなこと……あ」




テーブルに置いてあったお兄さんの携帯が震えた。




「待ち合わせ相手ですか?」

?「うん」

「よかったですね」

?「そうだね。何にもなくてよかった」

「ありがとうございました。お茶にあんみつまでご馳走になっちゃって」

?「どういたしまして。こちらこそありがとね」

「素敵な一日を」




お兄さんはひらっと手をふってお店を出た。不思議な雰囲気の人だったな。男性なんだけど女性的で、終始だるそうなのに仕草ひとつが美しくて、美人という言葉がよく当てはまる。

緑茶をひと口すすると、待ち合わせ空いてから連絡が入っていた。





[いまおきた、まじごめん]





どうやら長い眠りからやっと起床したらしい。





[はいよ、気をつけてきてね]





無駄に可愛らしいくまさんのスタンプに、[はいはい]ってしてるてるてる坊主のスタンプを送った。

あんみつんまい。もうひとつ頼んじゃおうかな。

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甘蜜 蜜華(プロフ) - あ、あぁぁぁぁ!!!好き。ななき。さんの作品好きです。もう全部好きです。 (2021年1月24日 9時) (レス) id: 80388bac17 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - しおさん» ありがとうございます!返信遅くなり申し訳ない…!少しですが楽しんでくだされば嬉しいです!今回もよろしくお願いしますね! (2021年1月23日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
しお(プロフ) - 新作…それも、それも、ド派手で愉快な3人組が…!!!!!!!!今作の世界観を構成する要素として彼らが選ばれたことが本当に嬉しいです、楽しみにしてます〜!! (2021年1月16日 0時) (レス) id: 33c3a138b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななき。 | 作成日時:2021年1月15日 14時

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