捌拾玖 ページ41
『じゃあ反抗してみたらどうだ？』
『はんこう……、どうやって？』
『そうだなぁ。例えば好きなことしてみるとか』
『好きなこと……お芝居とか？でも必ず主役かメインになりますよ。私は町娘や悪役にだってなってみたいのに』
『じゃあ、名前変えてやって見るとか。親父さんの息のかからない場所で勝負してみたら、自分の個性みたいなのが分かるんじゃないか？』
『自分の、個性………』
『がんばれよ。Aならきっとスーパースターになれる。期待してるぞ』
『なれますかね…』
『あぁ、このわたしとよく似ているから』
『自意識過剰すぎなんですけど…』
『過剰ではないさ。何せそれに見合った実績を持っているからね。はい、チェックメイト』
『あっ、……もう一回やりましょう』
『あははっ、いいよいいよ。Aは可愛いなぁ』
チェスの駒がいい音を鳴らす中、センパイはにこやかに手を伸ばした。高校生にもなって頭を撫でられるのが恥ずかしくてすぐにはらった。
センパイが卒業して、3年生になって、進路を決めようとする時、私は思いきって父親に打ち明けた。頬をひっぱたかれるのも覚悟して。なのに怒られなかった。
『分かった。子供のわがままを受け入れるのも親の役目だ。やってみなさい』
『ほ、ほんと……ですか？』
『あぁ、ただし───』
演劇系の専門学校に入って、私は思った以上に甘やかされていたことを思い知った。周りに置いてかれる感覚。皆の前で叱られる羞恥。努力なんて当たり前の世界。才能がないって気づくのに、それほど時間はかからなかった。
それでも必死にしがみついて、食い下がって、やれることはなんでもやってきた。作り笑いが何よりも嫌いだった。建前やお世辞なんてしたくなかった。今こうして上手くやれてる自分は、矛盾ばかりでできた傀儡だ。
「お前はいったい、何がおかしいんだよ」
ガラスに映る私は、相変わらず憎いくらい笑っていた。
「ほんとうって、ホンモノって、なんだろうね………」
大きな歓声、大切な友達、好きだと初めて思えた人。
そしてわがままを受けいれ期待に応えようとしてくれた人。
「あと少し…、少しなのに…っ……」
デッドリミットはもうすぐ。スタートする前から決められていたゴールが迫っている。……うんん、従順な私がスタートするための道草が終わろうとしている。
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ななき。(プロフ) - るるるさん» そういう事でしたか！いえいえ、ご指摘助かるんでうれしかったですよ。他の作品もよろしくお願いします！ (2021年6月5日 13時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
るるる(プロフ) - ると同一人物なんですけど、、、なんかこちらの端末のバグだったみたいで他の端末でみてみたら普通になってましたほんとに申し訳ない。。。 (2021年6月4日 23時) (レス) id: c7e16937c6 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - るさん» うぉっつ…ご指摘ありがとうございます…。どの話か教えて下さると大変助かりやす…。 (2021年6月4日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
る - 主ちゃんの名前Ａになってますよ(ﾎﾞｿｯ) (2021年6月4日 17時) (レス) id: 69a285c503 (このIDを非表示/違反報告)
ななき。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» ありがとうございます！応援を糧に精一杯最後まで頑張らせていただきますね！ (2021年3月6日 14時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年3月5日 13時
