参拾肆《urata side》 ページ35
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「浦田さん、ここ座っていいですか？」
う「……どうぞ」
「失礼します。ここなんですけど割とおおげさにやる感じですか？それとも低めですかね？」
う「そうですね。僕は子供のケンカくらいでいこうと思います」
「りょうかいです！じゃあ私もけっこうオーバーにやってみますね！」
この人は別に、お芝居の感じを知るために声をかけたんじゃないんだろう。ひとりで端にいた俺とコミュニケーションを取りに来てくれた気がする。
だって彼女は、事前に聞かずともマイクの前で相手に合わせることができるタイプの役者だから。今だって俺の話したくないオーラを察して戻って行った。
悪いことしたいかな……。
結局最初の数話で俺のキャラはいなくなったから、あとの現場の様子は知らない。
次に彼女と出会ったのは、それから半年経った頃だった。その日は朝からどんよりと重い雲が東京の町を包み、現場に入る頃にはパラパラだった雨がいよいよ本降りになっていた。スタジオから出て駅に向かおうと傘を広げると、視界の端に人影が写った。何の気なしに見ると、そこにはぼんやりと空を見上げる彼女がいた。
う「式井…さん？」
「……あっ、浦田さんじゃないですか！ども！」
う「どうも。よく僕の名前覚えてましたね」
「え？あぁ、私人の名前覚えるの得意なんですよ〜。それに浦田さんだって私の名前覚えたじゃないですかw」
う「見るアニメ見るアニメ名前が載ってますからね。さすがに覚えますよ」
「おぉ！ふつうにめっちゃうれしいです！まだまだモブばかりっすけどね〜」
久しぶりに見る彼女の笑顔は相変わらずのキラースマイルで、俺がまだ学生とかなら今のでコロッといっていたかもしれない。
う「どうしたんすか、こんなところで」
「あぁ、傘を忘れちゃって。いつ頃やむかなぁって見てました」
う「そうですか。ネット見る限りじゃそろそろ過ぎるみたいですよ」
「あっ、そうなんですね！」
う「……じゃ、僕はこれで。風邪ひかないように」
「はい！おつかれさまです！」
俺は「お疲れ様です」と返し、開きかけていた傘を広げて歩き出した。エンジ色の傘に水の跳ねる音をしばらく聞いて、それから振り返った。
う「これ、よかったら」
彼女にならまだスタジオにいた誰かが声をかけるんだろう。そもそもまったくもって俺のキャラじゃない。どちらにしてもそのまま帰るのが得策だ。
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ななき。(プロフ) - 甘蜜蜜華(精神安定剤())さん» コメントありがとうございます！こちらこそです照 今回のお話もなかなかに回りくどいのでたんまり悶えちゃってください笑 よろしくお願いします！！ (2021年2月21日 19時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
甘蜜蜜華(精神安定剤())(プロフ) - 新作おめでとうございます！！素敵な作品をいつもありがとうございます！ななき。さんの描くストーリーがもう、悶えるくらい好きです！！更新頑張ってください！ (2021年2月19日 22時) (レス) id: 95d0968963 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年2月19日 22時
