たかが50センチの距離 ページ10
「……どゆこと？w」
江「真剣に向き合ったり、真面目に取り組んだり、相手の言葉に悩んだり、今みたいに自分が知らない感情に名前をつけようとしてみたり……」
「頑張ったんだ」
江「まあ……今まで見逃して、見過ごして、見送ってきたものと、向き合おうとしてるっていうかさ、なんて言うか……」
「………江口は、すごいな……」
ポロッと言葉が漏れる。嫌味とか妬みとかそんなんじゃなくて、純粋に憧れる。
「私は、夢中になれるものがあったよ。これだけは人に譲りたくない、誰にもあげたくない、手放すくらいなら死んだ方がマシだっていうものが」
江「いいじゃん」
「……でも、いつの間にか自分から隠してた。見えないところに追いやって、閉じ込めて、捨てられもしなくてまだどこかに抱えてる」
江口は黙って私の話を聞いてくれている。
「………知らないものを見ようとしてる、触ろうとしてる江口はすごいよ。私はもうとっくに諦めちゃったや……」
江「………それ、おれにも抱えさせてくれないか」
「え？」
江「人ってのは自分のことがてんで分からない、自分のことなのに。だけど人にならなんとでも言える。それがその人の重荷を軽くしたり、その人の考えや心を柔らかくしてくれたりする」
「………うん」
江「プレッシャーになったりすることもあるけど、それだけじゃないから」
いつも聞いてる気だるげな声が、しっかりとした意思を宿して鼓膜をくすぐる。
江「花月ね、見せてくれた光景がこんなに綺麗で、思った以上に心躍るものだって知っちゃったから。だから、おれは言うことにするよ」
綺麗な顔が目の前にある。たかが50センチの距離。
江「そういうの、花月にも知ってほしい。もっかい知ろうとしてほしい。おれに教えてくれた花月 Aがそう思えるように、その手伝いがしたい」
「……そ、れは、どういう……」
江「………とりあえずまずは、友だちから始めてもいいか？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男性声優」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななき。(プロフ) - 春さん» 春さん！いつもご覧くださりありがとうございます！こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^) (2019年11月28日 18時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます！めっちゃいいです！！これからも楽しみにしてます！(^-^) (2019年11月28日 17時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななき。 | 作成日時：2019年11月27日 16時
