吐き捨てて ページ39
夏「いひゃい、いひゃい!!!なにしゅるんですかぁ〜」
「お前他校に彼女いたろ。冗談とはいえそういうのよくないんじゃないのー?」
夏「ごめんなさっ…、ごめんなさい!ちょっと反応見てみたくて!」
「正直か!………壮馬?どうした?うるさかった?」
斉「へ?!な、なんでもないですよ…?」
「そう?……でも顔赤いよ?」
斉「だ、だいじょうぶです!それより結構暗くなってきましたよ?」
夏「あ、ほんとだー。じゃ、おれ帰りますねー」
櫻「俺もそろそろ戸締りしようかなー」
「私も。今日はマイさん来れる?」
斉「あ、はい。母さんが迎えに来ます」
「そっか、じゃあまた明日ね、壮馬」
斉「はい、また明日」
壮馬と櫻井先生に手をふり、保健室を出る。
夏「じゃ、おつかれっす、せんぱい」
「おう、おつかれ。気をつけて帰んなよ」
夏「それおれのセリフ…w じゃ、おやすみなさーい」
マウンテンバイクで颯爽と坂をおりていく夏樹を見送りながら、靴を履き替える。
(長く居ちゃったな………帰りにスーパー寄らないと………)
あんなこと、人に話せるようになるなんて驚きだ。誰にも言えなかったのに。誰にも言わないようにまわりと接して来なかったのに。
拓也に話せたことで、受け入れられたんだろうか。………いや、私はとっくに受け入れられている。理解しているって。
──『気づいた時にはもう後戻り出来ないくらい熱に当てられていて、傷つけられたのに、もう捨ててしまいたかったのに、けっきょく手放せなくて今も大事にしまってある』──
自分の言葉が反復するように胸に響く。
(分かってる。分かっているよ。ちゃんと自分で………)
けっきょくいつも、失ってから気づくんだ。
あれだけなくなって欲しかったのに、いざ手放すと持っている人間が羨ましくて羨ましくてしょうがなくなる。
持っていた頃を思い出して、無理やり上書きをして忘れた気になって、またふとした瞬間に思い出しそうになって、慌ててあとから塗り重ねて………。
そうやって何回も何年も自分の中で消費してきた。しきれない部分がどんどん下に溜まって気持ち悪い。それでも堪えて、耐えて、吐き捨てて………。
情けないったらありゃしない。女々しくて、子どもっぽくて、いつまでもズルズルと過去に囚われて……。
(我ながら、ばかだなぁ……)
夕暮れに染る校舎に背を向けて、家路を急いだ。
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ななき。(プロフ) - 春さん» 春さん!いつもご覧くださりありがとうございます!こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます!めっちゃいいです!!これからも楽しみにしてます!(^-^) (2019年11月28日 17時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年11月27日 16時