黄色い歓声 ページ6
「36ページの5行目」と呟くと、「ありがと」と小声で返され読み始めた。
江「『思いつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば さめざらましを』」
津「言わずと知れた小野小町の歌だ。現代語訳は？」
江「あー、『好きな人を思いながら寝たから、その人が夢に現れたのだろうか。夢だとわかっていたらそのまま目覚めなかっただろうに』……？」
津「正解。なにを思いながら寝てたかは知らないが、授業中は夢じゃなく俺と教科書を見なさいね？」
教室のあちこちからキャーっと黄色い歓声がわく。すっかり慣れた光景だ。
津「その他にも和歌は恋をテーマにした歌がとても多い。今も昔も恋する気持ちは誰でも持っているってことだな。じゃあ次のページの───」
津田先生の話を右から左に流し、パラパラと教科書をめくっていると、ひとつの和歌が目に止まった。
『忘れじの 行く末までは かたければ 今日をかぎりの 命ともがな』
──「いつまでも忘れないよ」と言うあなたの言葉が、将来も変わらないとはとても信じられません。それならばいっそこの幸せを胸に、今日死んでしまいたいよ──
とんだヤンデレだな。………でも、分かるかもしれない。
『ずっと変わらない思い』や、『永遠に覚えていられる約束』なんてないのだから。いつか、きっと、花が散るように、雪が解けるように、ゆっくりと忘れていくんだ。
それが昔は怖くて、忘れられないように必死に手を伸ばし続けていた。『次を』にも『上へ』にも、文字通り命かけて答えてきた。でも───
期待しなければ、期待されない。
希望しなければ、失望することもない。
そうやって、いつしか相手にも、自分自身にも、何にも期待しなくなった。
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ななき。(プロフ) - 春さん» こちらにもコメントありがとうございます！これからも気長にお付き合い下さい！ (2019年10月20日 13時) (
レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 新作おめでとうございます！応援してます！(^-^)v (2019年10月20日 10時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななき。 | 作成日時：2019年10月19日 21時
