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天体のかけら ページ32

「………あ、流れた」

斉「え?」




壮馬がすっとんきょんな声をあげる。私は壮馬の後ろを指さして、慌てて望遠鏡を向ける。




「ほら!ペルセウス座流星群!流れてる!」




最初は2、3個流れてた星が、次第に10、20と数を増やしていく。落ちてきそうな流れ星。尾を引く星たちに向かって、指を組む。




斉「せ、先輩?」

「ほら壮馬!願い事、今のうちにしなきゃ早く消えるよ!」

斉「えぇ〜……」




心の中で3回、願い事を伝える。チラッと横をむくと、壮馬も戸惑いながら目をつぶっていた。


夜をすべるように星たちが流れていく。海に向かって落ちていく。まわりの星が瞬くようにより一層輝いている。

辞書では『引力によって地球にひきつけられ大気圏内で大気と摩擦し発光したもの』───なんてつまらない言い方をしていたが、これはやっぱり心を突き動かされる。

毎年見ていても、毎年心を奪われる。




斉「なんてお願いしたんですか?」

「ん?……ないしょ。口に出すと叶わないらしいからね」

斉「言霊ってあるらしいですけど」

「え、いや、……いや!ないしょ!」

斉「……ふふふ、あれだけ必死に願ってましたし、叶うといいですね」

「うん。壮馬は?」

斉「………僕は、星なんかに頼りませんから」




いつもの儚げな笑顔なのに、どこか大人っぽい。というかむしろ儚さも相まって色っぽい。




斉「……でも、自分でどうにも出来ないことは、星にだって、虹にだって、4枚の葉にだって、頼ってみたくなるのかもしれませんね」

「………壮馬の願い、叶うといいな」

斉「はい。A先輩のも」




悲しそうに星を見つめる壮馬の瞳に、小さな星が瞬いている。私はもう一度、彼が見つめる空を見上げ、手を合わせた。


どうか彼が、笑って未来の話を出来ますように……。


私の願いを叶えてくれたことは一度もないけれど、それでも願わずにはいられない思いと一緒に、星に届くように強く、強く思いを馳せた。



天体のかけら。まさに郡をなして駆け抜ける星たちを横目に、月だけは静かにぼんやりと光っていた。

夏の思い出と海の香り→←いつもより低い声



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ななき。(プロフ) - 春さん» こちらにもコメントありがとうございます!これからも気長にお付き合い下さい! (2019年10月20日 13時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
- 新作おめでとうございます!応援してます!(^-^)v (2019年10月20日 10時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年10月19日 21時

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