木村良平という男 ページ6
この人はわかりやすいのか、わかりやすく見せてるのか……それまではわからなかったけど。
だから、少し興味が出た。最初はほんとにそれだけだった。
僕は、悲劇のヒロインになりたいわけじゃない。
僕は、かわいそうな人間になったつもりはない。
でも……
『無茶もいいけど、休憩しろよ』
『ほんとにお前はおもしれぇなぁw』
『またからかったのかよ。めちゃくちゃ慌てたわ』
『………大丈夫だよ。心配すんな』
そう言われるたびに、胸がぎゅっと苦しくなった。
『嘘だよね』『騙されない』『信じてたまるか』
何度も言い聞かせたけど、結局この人は手を引っ張って、背中を押して、いつも近くにいてくれた。
僕自信のことを怖がらないでくれて、
僕の元から離れていかないでくれて、
僕を最後まで諦めないでいてくれて、
『唯一無二の理解者』
……いや、これはそんな可愛いものじゃない。
憧憬、欲望、嫌忌、我慢………これは一種の依存だ。
みんなのためにと言いながら、ただ1人の声を求めてる。救われるためにと手を伸ばしながら、自分自身が諦めている。
光を見せてあげるだなんて言われて、僕だけじゃ見れない夢の先を、手伝わせてるだけなんだ。
僕はずるいやつだから、姑息な人間だから、掴まれた手を握り返せなくて、そのくせ自分からじゃ離せなくて察してもらう。子供だから、愛して欲しいと欲張ってしまう。
あの人はとっくに歩いていけるというのに、僕が先に進みたくない、隣にいて欲しいと思ってしまったばかりに、いつまでも留まっていてくれる。
優しい人なんだ。だから僕みたいな厄介な子供に縋られる。
僕は、希望になんてなれない。だって、もうずっと諦めているもの。
僕は夢の続きにも、ましてや変わりにもなれなかった。
ごめんなさい、兄さん……。
貴方の理想になれなくて、ごめんなさい………。
良「ん………んっ………んんんー………ふぁぁあ。………おはよ、奈々」
「おはようございます良平さん。そしてあけましておめでとうございます」
良「……おう、あけましておめでと〜」
まだ眠そうだ。目を擦りながら大あくびをしている。
「さて、安元さん特製雑煮セットがあるんですけど、食べますか?」
良「いいね。あぁ〜、肩こった……」
「あんな所で寝てるからですよ。あとで肩揉んであげますから、お風呂はいって目を覚ましてきてください」
良「あいよ〜………ふぁぁあ……」
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ななき。(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月19日 20時) (レス) id: 54cfb5026c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年7月19日 20時