七夕のかたわれ ページ25
椿「そうそう、柚に望遠鏡借りてなw まず組み立てるのにひと苦労して、どれだどれだ、あれかあれかって探してさ」
「結局どれがポラリスか見つけられないまま、………いつも月ばかり見てた」
椿「東京は明るすぎたんだよな。あんなに周りが光ってたんじゃ星なんて見えるわけないだろうにさ」
「でも楽しかったなぁ……」
椿「楽しかったよなぁ……w」
静かに流れていく時間。相変わらず星は見にくい。
椿「北極星、今ならすぐ見つけられるよ」
「ほんと?どれどれ?」
椿「ないしょ」
「なにそれw」
椿「いまの奈々には、北極星より大事な道しるべがあるんだろ?ポラリスより眩しくて、いつまでも手を伸ばしたくなるものが」
「……椿さんってたまに確信づいたこと言うよね」
椿「まあ、こん中じゃ一番年上ですしからね〜」
ココアの缶を咥えたまま、柵を『よっ』と飛び降りる椿さん。
椿「なあ知ってるか。北極星ってさ、いつかポラリスじゃなくなるんだって」
「変わるってこと?」
椿「そう、次はベガらしい」
「ベガって、あの織姫の?」
椿「そう、七夕のかたわれだ」
「へぇ、どうして変わるわけ?」
椿「さぁ、そこまでは知らん」
「えぇ〜、適当だなぁ」
椿「今の北極星が変わるのは何万年もあとの話だけどな」
「へぇ、じゃあ僕達とっくにいないじゃん」
椿「そうなんだけどな。……奈々の道しるべも、きっと変わる日が来ると思うよ。それはとっても恐ろしいし、怖いことだけど、拒んじゃいけないって俺は思うわけよ」
「……どういうこと?」
椿「んー、俺も言っててなんだかわかんなくなってきたんだけど、つまりはだなぁ……。
これから色んなことが変わると思う。信じてたものが突然なくなったり、かと思ったら急にひょっこりあらわれたり。戸惑うこともあるだろうし、周りが見えなくなることもあるかもしれない。
それでも奈々、お前の信じる、望む未来の先に俺達はいたいと思うんだよ。奈々がどんなにどんなにどんなに一人になりたくても、俺達がきっとさせないと思うから。
奈々に同じだけ思って欲しいなんて言わねえけどさ、俺たちがそう思ってるってことくらいは、知ってて欲しいわけ」
「…………ぁ……ぅ……」
椿「あとこれ、幼なじみ&先輩からの助言。もうちょっと自分に素直になれよ、奈々。そうした方がきっと何倍も生きやすくなるし、人生に色がつく」
月は、相変わらず、ぐるらりと揺れている。
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ななき。(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月19日 20時) (レス) id: 54cfb5026c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年7月19日 20時