五月の星屑は金平糖【男性声優】11 (ページ24)

今日:11 hit、昨日:0 hit、合計:26,449 hit

ポラリスページ24

▪▪▪

柚くんと晶はたまたまいた先輩と話をしている。会計を終えた僕達は外で待つことにした。車進入禁止の柵。その上に乗って缶ココアを飲む。

椿「奈々、お前なんかあったろ？」

「なんだよ藪から棒に」

椿「ほら、俺に対してちょっと当たりが強くなる時は、大抵なんか悩んでるか、柚にいじめられた後だ」

うぐっ、言い黙ると、椿さんは少し上を向いた。

椿「別に俺はいいんだけどな、話したいことは無理に話さなくてもさ。
今のこれが俺とお前の距離感で、それが心地いいって感じてるから、無理やり詰める必要も無い。全部が全部言わなくても、包み隠さずなんでも話さなくても、俺はお前といるの楽しいし、文句もない」

冷たい空気に高揚した頬が少し際立っている。白い息が上へ上へと登り、やがて消えていく。その道筋を見つめると、ひときわ輝く星が目に入った。

椿「あれさ、あのまっぶしい星、ポラリスっていうんだって」

「ポラリス？なんか聞いたことあるかも」

椿「俺達が共演した舞台の名前だ。

『ポラリス、あれがおれたちが目指す星さ』

『ぼくらはあそこに辿り着けるだろうか』

『もちろん、おれとおまえなら、きっと届くはずだよ』

『でもぼく不安で仕方ないよ』

『どうして？』

『だってここは【雨の古島】。昔から雨ばかり降るじゃないか。こうして星を見れるのも、何十日ぶりだって言ってたよ？』

『誰が？』

『君がさ。それにあんなに小さい星をどう捕まえるって言うんだい？』

『こうやるのさ。ほら、見てごらん』

『わぁ、手のひらが光ってる。まさか君、本当にポラリスを捕まえたの？』

『これはね、月の光を集めた虫なのさ。この虫は月光の力で夜をほんの少し照らしてくれる。こんな小さな虫が光ることができるんだ。
ならおれたちだって【雨の古島】であるこの島に、光をともすことがきっと出来る。何万光年向こうで輝くポラリスがおれたちを導いてくれるように』

『ぼくらだって、この島を照らすことが出来るかもしれない！そうだね、その通りだ。さあ、行こう』

『あぁ、行こう。おれ達がこの島のポラリスに』

『うん、行こう。ぼくらがこの島のポラリスに』」

普段より優しい声色で、絵本を読むように語っていく椿さん。

「……なつかしいね、あの頃はよく星を見に行ったっけ」