兄さんの思うところ ページ3
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良「まあまあ、ぐっすり眠っちゃって……」
「………すぅ………すぅ…………」
規則正しい寝息をたてて、ソファーで寝落ちしてしまった奈々。
『一緒に年越ししよう』……なんて俺が言ったから、眠いの我慢して起きてくれてたのに、あと30分という所でついに寝てしまった。
すっかり大人びた表情をするようになって、背だって高くなって、慕う人が増えて、慕われる人にもなって。
でも寝顔はまだ、あの頃の幼さが残っている。
──いいの、頑張れなんて──
誰かの声がする。
──もう十分頑張ってるのに──
また聞こえた。
──君に頼っちゃうくらい弱ってるいるのに──
キンキンと耳鳴りのような音が耳の奥で響く。
──ほんとに、よかったの?──
良「………普通の女の子なら……」
──なんだよ──
良「普通の女の子なら、もういいよって、よく頑張ったなって言って頭撫でてるよ。
でもあいつは普通じゃないから。特別……だから。だからあいつの頑張りを、あいつ以外が止めることは出来ない。……もちろん俺も」
──でも、また倒れちゃうかもよ──
良「…………っ……後悔して、絶望して、また苦しむあいつなんて、死んでも見たくないんだよ」
胸をチクチクと刺していた何かが、大きく、黒く、より深く、俺の感情の中に渦巻いている。
ここ数ヶ月無理に作って演じて、感情が麻痺している。
孤独な女の子。元気な高校生。寂しがり屋の役者。ノリのいい同居人。たくさんの仮面をつけては外し、剥がしては入れ替えて……。
平気なわけない、大丈夫なわけない。
依存だとしても、委託だとしても、それでも俺は───
良「………もう二度と、迷わせないから……」
──お前はまた間違えるんだね。そうやっていつも──
うるせぇ。お前に言われなくても知ってるっつーの。
いいからちょっと黙ってろよ………。
やけに静かな夜が更けてゆく。
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ななき。(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月19日 20時) (レス) id: 54cfb5026c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年7月19日 20時