もう一度、約束をしよう ページ11
良「進めるんだよ。俺も、お前も」
─立ち止まりすぎていただけなんだから─
良「好きなところに行ける」
─手を離すだけでいいんだから─
良「見たいものを、見に行くんだ」
─もう、お互いの目や耳を塞ごうするのはやめよう─
良「そろそろ、行こう、な?」
─きっと、変わる。変われるはずだから─
「………そうですね」
お得意の偽物笑顔で完璧に笑って見せた奈々に、俺はもう……。
…いや、違う、違うだろ。
良「奈々!」
「……っ……」
良「理想になれ。俺や、あいつらや、ファンの子達や、大人なんかのじゃなくて、お前が望む、お前自身の理想になれ」
「………なれると思う……?」
良「あぁ。言ったろ。『自分の事を信じられるように見てあげて』って」
これは、奈々が声優をやる少し前の話。銀杏並木の見える人気のないカフェで誓った約束。その約束をまだ俺が覚えていたことに驚いたのか、思わず俯いていた顔を上げた奈々。
良「お前が無理だって思った時は俺が抱きしめるから。頑張れなくなったら俺が代わりに励ますから。俺達の約束は、最初っからそれだけだったんだ。面倒なことは忘れて、余計なことは考えるな。だから、だから………」
「じゃあ、飛んでもいいんですね」
──飛んでいかないでね──
夏の星空がフラッシュバックする。屋上、黒い雲、極上のウイスキーに眩しい街。
あの頃、俺は何を悩んでいたんだっけ。
何を苦しんでいたんだっけ。
何を考えていたんだっけ。
あぁ、もうそんなのどうでもいいか。
だって俺達が大事なのは、『今』なんだから。
良「……あぁ、俺もゆっくり歩いていくからさ」
一緒に飛べなくたっていい。同じペースで歩かなくてもいい。
相手を引き止める理由も、意味も、ないんだから。
「………待ち合わせを、しましょうか」
良「いいね、どこにする?」
「………じゃあ、─────で」
良「………おう」
約束をしよう。もう一度。
過去をくいて嘆くより、未来を見つめて笑えるように。
───
43人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななき。(プロフ) - かなとさん» ご指摘ありがとうございます。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年7月19日 20時) (レス) id: 54cfb5026c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ななき。 | 作成日時:2019年7月19日 20時