規格外の度量 ページ45
センラは私の食べ終わった食器を片付けて私のカバンを持つ。スマート過ぎてイタリア人かと思い始めた。周りの目線が恐ろしい。
セ「さ、帰りますか？」
「いやまだ授業とか、サークルとか……」
セ「なに言うてますの。Aさんの今日の授業はさっきので終わり。サークルは今日おやすみですよ」
「えっ、そんなの？」
セ「そうですよw ほんと、Aさんはセンラがおらんとダメですねぇ」
「ごめんごめん、そっか、休みか……」
休みね。うん。なんでこの子が知ってるのかなぁーなんて突っ込まないよ？ マネージャーかよ。あー、突っ込んじゃった。
セ「今日は鍋ですよ〜」
「鍋か、冬ですね〜」
セ「冬ですよ〜。そろそろ雪が降るかもしれませんねぇ」
「雪、いいね。すきだよ雪」
セ「えぇ〜、寒いだけやないですか」
「それがいいんだよ。音を吸収してくれるからね。あの静かな感じがすき」
セ「なんか雪が羨ましくなってきました……」
「雪が？なんで？」
セ「Aさんに二度もすきって言ってもらってるじゃないですか……」
ぷくぅと子供みたいに顔を膨らませるセンラ。中学生の時は大人ぶって秘密主義でいた彼が、こんなに感情を顕にしていることに驚きつつ、かわいいやつだなと思ってまう。
「あははっ、センラは雪にも嫉妬するのかぁ〜」
セ「そうですよ。Aさんが握ってるペンにもAさんが着てる服にも嫉妬しちゃいますよ」
「えぇ〜、じゃあセンラはペンや服になりたいの？」
セ「…いいや、センラはセンラでいいです。だって話せなくなるし、壊れたり破けたりしたらおしまいですもん」
「はは、たしかにな。それにそうなったら私も困るなぁ。かわいい後輩をひとり失うのは心苦しいものがあるよ」
セ「……じゃあセンラは意地でもセンラでいいひんとですね」
「そうそう。センラは永遠にセンラでよろしく」
セ「はーい」
『はたから見たら歪かもしれないけど、お前にとったら案外いい関係』
そうなんだろうか。そうかもしれない。頼られたり慕われて悪い気分はしないし、あんなに想ってくれているんだからそれに応えたいとも思う。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
