ヒールの結末 ページ35
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？「おかえりなさい、Aさん」
「……っう"ー……」
目の奥の奥の方が痛い。痛いどころかめまいと吐き気で言葉が出てこない。意識してないのに痙攣したみたいに手が震える。
反対の手で押えてグッと押さえ込んでしばらく唸っているとだいぶ緩和されてきた。ゆっくりと目を開ける。
？「今度は女の子をスポットライトからかばって脳内出血……まるでヒーローですね」
馬鹿にしているのだろうか。いや確実にバカにしてる。ヒーロー？ちがう。私はヒールだった。死にたくないがために志麻くんを利用しようとして、せっかく仲良くなったルナちゃんに幸せになってほしいと願いながらも心から応援することは出来なかった。
悪は成敗されるべきなんだ。いつまでもドロドロの感情のまま生きながらえていたって、報われることなんてあるはずもないんだから。
「また、ここか……」
？「はい。あ、頭は大丈夫ですよ。体もリセットされますから。ただ直後は錯覚でしばらく痛みが続きますのでご注意ください」
「ご注意もなにも、そんなのは身に染みてわかってますよ……」
？「これは失礼いたしました。……さて、どうです？」
「『どう』…とは？」
？「次でクリアできそうですか？」
大きな本を持ってこっちも見ないクロネコさん。おそらく本棚に並べてあった洋書だろう。何が書いているのか。……というかそのボタン目で見えているんだろうか。
「……そうだ。クロネコさんの言う『恋をする』って具体的に教えてほしいんだけど」
？「あぁ、それはもう人それぞれですよ」
「え……」
？「明確なアンサーはございません」
「……じゃあ、私が『これは恋だ』って認めたらクリア？」
？「半分正解で、半分間違っていますね」
「半分？」
？「確かに『恋をする』の正解は貴方が決めます。ですがそれは口に出して『私は今、恋をしている！』なんて叫んだって条件は満たされません」
「じゃあどうやって判断するの……」
？「それは潜在的ななにかですよ」
「『潜在的ななにか』………曖昧すぎません？」
？「そんなことはありませんよ。恋というものは実に難解で、そして案外近くにあるものですから」
「………近くに」
近くってなんだ…。己とかいうわけでは無さそうだし、まさか目の前にいる彼に恋しろとでも言っているのか…？
冗談がすぎる。犯罪者と愛を育むつもりはもうとうない。
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作者名：ななき。 | 作成日時：2021年1月8日 21時
