死 ページ10
目を覚ましたとき、おれは高専の保健室にいた。ベットから上半身だけ起き上がり辺りを見回すと、包帯がぐるぐる巻きになっている自分の身体と、家入さんと五条先生が目に入った。座って話していただろう2人はおれの方に近付いて来る。
「おっはよ〜う!」
片手を上げて五条先生が明るく言う。人が死にかけてたってのに、呑気だなぁこの人は。
家入さんに、おれは2ヶ月近く意識不明だったと聞かされた。
身体中の骨が折れ、内臓に突き刺さっていて、酷い有様だったらしい。完治するまでは車椅子で移動らしいが、死ななくて良かった。多分あいつは1級呪霊だったのだろう。
五条先生からはあの親子が無事だったことを聞いた。車で待機していた補助監督さんに、おれの助けを求めに行ってくれたらしい。優しい人だったんだなぁ。呪霊を祓えて良かった。分け隔てなく助けるべきなのは理解しているが、当然良い人を助けたい。
ふわふわした気持ちになり、勝手に口角が上がった。
「A」
しばらくの沈黙の後、五条先生が口を開く。先程までの軽薄そうな雰囲気が消え、声のトーンが下がった。
思わず身構える。何か嫌な予感がする。こういう時の彼は、嫌なことを突きつけてくる。
「悠仁が、死んだ。」
『………は、』
短い文なのに区切って、噛み締めるように口に出された彼の言葉は、到底信じられるものでは無かった。
息が抜ける音に続き、やっと意味が頭に染み込んできて、は?と間抜けな声が零れ落ちた。
ゆ、うじが、悠仁が、死んだ?
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作者名:月裏 餅 | 作成日時:2022年3月3日 13時