【文スト】●依頼人だったんですけど●【太宰治】

〈18〉やる気の条件 ページ18

依頼内容は、酒場への嫌がらせの犯人探し。


太宰さんの頭の良さは判っている。


きっとやる気になればすぐに解決してくれるだろう。


私と一緒だからとやる気になっていたのに・・・。


依頼内容を確認してからどうしてかやる気が無くなっていた。


『急にどうしたんですか？行きつけのお店からの依頼なんですから。』


連れて行ってもらったあのお店。


「店が困っているのは問題なんだけれど・・・嫌な予感しかしないのだよ。」


『何ですか、一体。』


予感くらいで仕事を投げられては困る。


それにあのお店は私も気に入っているから、無くなられでもしたら困る。


あれから良く一人でも行くようになった。


まぁ行きつけの太宰さんに会ってしまうことも何回もあったけど。


嫌がらせの内容はテーブルに傷を付けられるなどのことから、最近は酒の瓶が割られている、とエスカレートしてきている。


『行きますよ、太宰さん。』


「Aちゃんと出掛けるのは嬉しいのに行きたくない。」


私の頭じゃ解決出来ないし・・・。


どうしたらやる気になってくれるだろうか。


『仕事ですよ？』


「そうだねぇ〜。」


『太宰さん、私は事務員でバイトです。』


「うん。」


『もうこんな風に一緒に仕事をする機会は無いかもしれないですよ。』


「それは無いから大丈夫。」


『え？』


いやいや、にっこり笑顔を返されても答えになっていない。


「じゃあ取り合えずお願いを聞いてくれるかい？」


『内容によります。』


「怒らないでほしい。」


『はい？』


・・・何に。


『何だか、私が嫌な予感しかしないんですけど。』


「気のせいだよ。」


『取り合えず太宰さんに怒らなければいいんですね？』


「うん。」


それで仕事になるのなら・・・


『分かりました。』


「よし、では行こうか。」


隣に並んであの店へ向かう。

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