【文スト】●依頼人だったんですけど●【太宰治】

〈14〉巻き込み事故 ページ14

「Aちゃん！」


そちらに目を向ければ太宰さんがソファから下りて此方にやってきた。


「好・・・」


「太宰ぃぃぃ！」


まぁ言おうとしたことはいつもと一緒だよね。


「貴様は呆けていないで仕事をせんかぁ！」


「私は今、Aちゃんへの告白に忙しいのだよ！」


『忙しくないでしょう。仕事してください。』


ガシッ


『は？』


いやいや、少し引っ張られてるよね、私の服。


さらにそんな太宰さんを引っ張る国木田さん。


この状態は・・・


「貴様は仕事だ！」


太宰さんが引摺られれば・・・


『こうなるよね！国木田さん待って下さい！！』


私も引き摺られてるんですけど！


というか、怒鳴り声で言ってるお説教で聞こえてないの！？


「しっかり反省と仕事をしろー！！」


『わー！！！』


浮いてるよ体！


太宰さんを背負い投げしたら私も飛ぶでしょ！


飛んじゃってますから！！


暗いとこに突っ込まれて閉まった。


・・・閉まった？


後、痛くない。


結構な勢いで投げられたと思うんだけど。


「国木田くんは相変わらずだよねぇ。」


『なっ？！』


すぐ後ろ・・・いや、兎に角近くで声がして飛び上がれば、自分の状況がどうなっていたのかが判った。


どうやったらあんな投げられ方して普通に座っているのか分からないけど、そんな太宰さんの上に私は乗っかっていた。


明かりを付けられた。


何かの電子機器の部屋みたい。


こんな部屋があるんだなぁ。


そんな部屋に似合わない書類の山が。


「こんなことしても私は負けないのにね。」


その笑顔は国木田さん宛てですか？


要するに


『太宰さんへのお仕置きに巻き込まれた・・・？』


「そうなるねぇ。」


いやいやいやいや。


『巻き込まれたというか、巻き込みましたね？』


「こうでもしないと話を聞いて貰えないからね。」


『それだけの為にこんな・・・』


「誤解を解きたいからね。」


そんなに必死になって、一体なんなんだ。


扉は開かない。


鍵も見当たらない所、特殊な開け方なのかな。


「本当に好きだと人に言ったのはAちゃんだけなのだよ。今まで女性に声を掛けていた時期があるのは事実だけど、もうそんなことはしていない。だってAちゃんに出会ったからね。」


後ろからそんな風に言われて、何でモヤモヤしていたものが晴れたの私は。


嘘じゃないんだろうな。


なんて思ってしまう私はお人好し？


振り向けば笑顔が待っていた。

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