【文スト】●小噺茶屋●

・牛丼 【宮沢賢治】 ページ6

『美味しいよね、牛丼！』


いつも通りに賢治君とお昼の買い出しに牛丼屋さんに行って、事務所で食べる。


「今日も美味しいですね！」


それにしても


『本当に賢治君って牛丼好きだよね。』


いつも牛丼食べてる気がする。


お昼の時間が賢治君と重なる時は必ずと言って良い程、牛丼だ。


「好きですよ。」


『美味しいから？』


「それも勿論そうなんですが。」


お、他にも理由があるみたい。


「探偵社に来てから牛たちと触れ合う機会が減りまして。」


牛たちと生活してたんだよね。


「飼うことなんて出来ませんし。」


『うん。』


「飼うのも食べるのも見るのも、牛は好きなんです。」


『凄いよね。』


私が賢治君みたいに牛を飼ってたら、きっと牛丼なんて絶対食べられないだろうなぁ。


「だからいつも牛丼なんです！牛丼を食べてると牛たちを思い出せるんです。」


『・・・え？』


「遊んだ時とか、言うこと聞かなかった時のこととか、世話していた時を思い出せるんです。」


ちょっと待った。


『可愛がってたんだよね？』


「はい！可愛かったですよー良く草を食べてくれて、毛並も良くて。」


それを・・・コレを食べながら思い出してるの？


私は食べかけの牛丼から目が離せない。


「故郷が懐かしいです。」


そう言いながらパクパクと食べていく。


「あれ？Aさん食べないんですか？」


『・・・私には無理だよ。』


牛を飼ったことはないけど・・・


完全に牛たちが頭の中を占領してる。


『うっ・・・。』


絶対無理・・・。









「Aさーん！お昼の買い出しに行きましょう！」


『ごめん無理！』


私は牛丼が食べられなくなりました。

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