【文スト】●十人十色〈過去編〉● (ページ5)

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制服姿からして高校生だろう。

この前会った変わった子。

あれ以来、此処で見かけなかった。

私が言うことを守っていたみたいだ。

そんなお人好しが存在するのか。

否、現にこの掴んだ腕の主はそうなんだろうけれど。

こんな通りに居ては只では済まない。

路地から通りに出さなければ。

通りに出る手前で手を離した。

「さぁ帰り給え。」

もう会うこともないだろう。

『何時も此処にいるんですか？』

「否、偶々だよ。」

確かにこの間までは芥川君に会いに此処まで来ていた。

今日は偶々、ミミックのことを考えながらブラブラしていただけだ。

頭を整理しようと気分転換に。

『また会えませんか？』

「ん？」

『何度も会うなんて縁があると思うんです。あ、私は神谷Aです。』

笑顔で嬉しそうに話している。

「ナンパかな？」

『え、あ、ごめんなさい！気分悪くしちゃいましたか？』

今まで会ってきた下心丸出しの女たちとは違うようだ。

「比喩かい過ぎたかな？」

『はぁ～良かった・・・怒らせちゃったのかと焦りました。』

「何時もこの時間だったね、会ったのは。」

『バイト帰りなんです。』

なるほど、だからこんな時間に歩いているのか。

・・・後ろから聞こえている足音が増えてきた。

ポートマフィアか貧民街の連中か地下の住人か・・・。

夜の時間に完全に切り替わる頃だ。

「あまり良くない時間だ、帰り給え。」

『あの・・・』

「・・・明後日。」

『え？』

目を丸くしている神谷Aという女の子。

私だって自分の口から出ている言葉に驚いている。

「此処に来るよ。但し、通りの此処で待っていること。路地に入ってはいけないよ。」

そう言えば眩しい笑顔。

『明後日ですね！ありがとうございます！バイト終わったら直ぐに来ますね。』

「分かったから早く帰るんだ。」

『はい。明後日楽しみにしてます！』

手を振りながら駆けていく後姿を確認して路地へ戻る。

さて、ミミックか・・・。

作戦や今までの経緯を思いだしながら宛もなく歩く。

それにしても・・・

「楽しみにしている・・・か。」

名前も知らない奴に言う台詞とは思えないのだけれど。