【文スト】●益者三友●【双黒・中也】 (ページ36)

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『お、おかえりなさい。』

「只今。思っていたより早く終わって、部下達に任せて来たのだよ。」

まだ戻っていないと思っていたから少し驚いてしまった。

「また中也とやっていたのかな。」

私の手を指差され、確認すれば左手の甲に痣が出来ていた。

中也さんが言っていた通り、何時もと違ったんだ・・・こんな所に痣なんて最近では有り得ない。

『手合わせして頂きました。』

「最近はそんなこと無かったのに、珍しいね。」

にっこり笑っているが、原因は自分だと自覚しているだろうと勝手に思ってしまう。

『書類は全て処理済みです。他に何か私に出来ることはありませんか？』

「んー、無いね。じゃあ、私と飲みに行こうか。」

『すみません、明日のお約束だったので今日は中也さんと約束しているので。』

気づけば至近距離に太宰さんが来ていて、思わず少し後ずさってしまった。

後ろは壁だからこれ以上は下がれない。

『あ・・・の・・・』

あの出来事が頭を過って目を合わせることが出来ない・・・どうしよう。

「Aちゃん。」

名前を呼ばれてしまっては、顔を上げるしかなくなる。

身長差がある為、上を向く形になり、真っ直ぐに太宰さんの目が私の目を見ている。

目を離すことは許さない

そう目で言われている気がする。

「接吻した時に言わなかったこと、矢張り伝えないといけないね。」

思い出されて顔に熱が集まるのが分かる。

頭から湯気が出ているんじゃないかと思う。

「好きだよ。」

その言葉に私はただ驚いた。

告げるとAちゃんは目を見開いている。

そんなに驚くことだろうか。

接吻したのだからある程度・・・想像つくわけがないか。

子供時代は操られ、其の後は組織で働いていたのだから。

ただ固まってしまっている彼女。

「Aちゃん。」

声を掛ければビクリと肩が跳ね、また下を向いてしまった。

『わ・・・分かりません。私・・・』

混乱しているね。

それでも私は答を知りたい。

この子は意識してきたことが無いのだ。

見ていれば分かる。

無意識に線を引いて、上司と部下、恩人、ソレ以上に考えないように。

だから、これをきっかけにはっきりしてほしい。

私か・・・中也か・・・。